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10 心が嫉妬で渦巻きます ※

 さっきほどではないけれど、それでも冬磨はゆっくりと優しく俺の中に入ってきた。 「はぁ……天音の中……マジでやばい」  奥まで入ると、優しく包むように俺を抱きしめた。 「ぁ……っ、とぉ……ま……」 「……っとに、かわい」  枕にしがみついていた俺の手に冬磨の手が重なった。手の甲から恋人繋ぎでぎゅっとされて、俺は固まる。  冬磨は……セフレにもこんなことするんだ。きっとみんなにしてるんだ……嫌だな。恋人みたいなことはしないでほしい。たとえ同じことをされても、嫉妬で頭が沸騰しそう……。  そんなことを考えていると、冬磨の腰が動き出し、同時にうなじから首を舐められる。 「ンっ、……や……っ、……ぁ……っ……」  ビリビリと快感が全身に走って、思わず冬磨の指をぎゅっと握った。 「天音のその控えめな声、マジでやばいな……。余計にクる。もっと鳴かせたい」  耳にささやかれて耳孔を舐められた。 「んんっ、ぁ……っ、あぁ……っ……」 「いいね。もっと鳴けよ、天音」  奥の深いところを何度も突かれ耳を舐められ、手は優しく握られたまま。  俺の背中にピタリと冬磨の体が密着してる。  まるで恋人みたいだ。冬磨は……セフレをこんなに優しく抱くんだな……。   「あ……っ、と……ま……っ、……っ……」    好き……と口からこぼれそうになった。俺は慌てて口を閉ざし、冬磨の指を強く握りしめる。  信じられないほど幸せで嬉しい。でも、同時に胸の奥で嫉妬が渦巻く。  俺は冬磨が好きだから、こんなにも幸せだ。  でも、冬磨に抱かれる人は、みんな同じくらい幸せを感じているんじゃないだろうか。こんなに優しく抱かれたら、たとえ初めは好きじゃなくても、みんな冬磨の虜になるだろうと思った。  冬磨に抱かれるだけで夢みたいだと思っていたはずなのに、身の程知らずに湧き上がる嫉妬が、俺の胸を苦しめる。 「あ……っ、あっ、も……むり……っ」 「無理? イッていいよ。でもまだ終わらないよ?」  俺がイッてもまだ終わらない、その言葉に安心して、張り詰めていた緊張が解けるかのように俺は弾けた。 「あ……っ、とぉまぁ……っ!」  身体中がビクビク震え、頭の中が真っ白になった。  気持ちいい……。一人でやるのとは比べものにならないほど気持ちいい……。  冬磨……冬磨……大好き……冬磨……。  冬磨がなにか言っていたけれど耳に入ってこない。  かすかに「かわい……」と聞こえた。    冬磨は果てた俺を優しく抱きしめて、頬やうなじに何度もキスを落としながらずっと頭を撫で続けてくれた。  他のセフレにもこんなに優しいのかな。  そんな冬磨を想像して、自己嫌悪におちいった。俺……最低だ。  いちいちそんなことを思う自分が、本当に嫌になった。  冬磨の姿を見られるだけで幸せだと思っていた頃を思い出せ。そう心の中で己を叱咤した。 「少し落ち着いたか?」 「……ん」 「動いても平気?」 「ん……へいき」 「そろそろ前がいいんだけど」 「……やだ。俺、前嫌いだから」 「ええ? 嘘だろ……?」    前から、嫌だ、と数回くり返し、そのうち冬磨が諦めたように腰を動かした。   「は……ぁっ……」    気持ちいい……。中を出入りする冬磨のもの。うなじや耳、頬にキスをする唇。手を握る優しい手。ときどき頭を撫で、肩を撫でるあたたかい手。冬磨のすべてが優しくて気持ちいい。  冬磨とこうなれて、本当に俺は幸せだ。  たとえセフレの一人だとしても、ずっとずっとこうしていたい。  冬磨……俺を切らないで……。お願いだから……。 「は……っ、も……イク……っ」  冬磨の切なげな声。  すると、突然冬磨が俺の身体を支えて横に倒れた。 「え……っ」  俺の片足を持ち上げグッと奥に打ち付ける。 「あぁ……っ! ……あ……っ、……ッ」  恥ずかしいっ。さっきのままがよかったっ。  すると、足を支えていた冬磨の手が、ふいに俺のものふれて優しくしごき出した。 「ひゃっ、や……っ!」  上げられた足は、冬磨の手が離れて前に倒れる。  後ろと前を同時に刺激され、目の前がチカチカとして激しい快感が身体中を駆け巡った。   「やめっ、いいっ、おれ……はっ……」 「なんで。一緒にイこ? 天音だってもうガチガチじゃん。このままじゃつらいだろ」 「や……っ、やだっ、あっ、変に……なるっ、やだっあ……っ」 「……ほんとお前……ギャップやばいな……。天音と一緒にイきたいんだ。ほら、素直に感じてイって。俺もマジ、もうイク……っ」  ずっと優しかった冬磨の動きが、初めて快楽を求める雄の動きになった。お互いの肌が激しくぶつかり合う音が後ろから響く。  もうだめだ。頭が真っ白になる……っ。 「んっ、あぁ……っ、やぁ……っ、とぉ……っ、……っ、とぉまあっっ!」 「は……っ……っ!」  俺がイッたあと、冬磨は俺の最奥に打ち付けるようにして、ぶるっと震えた。  まるで俺の奥深くに種付けでもするかのようなその動きに、言葉では言い表せないほどの激しい喜びが心に沸き起こる。  そっとお腹に手を添える。ここがさらに愛おしくなった。  冬磨は俺と繋がったまま、ゆっくりと荒い息を整えた。  後ろから回された冬磨の腕。  俺を抱きしめるというより、だらんと脱力してるようだった。  どのくらいそうしていたのか、そのうち俺の中の冬磨が自然にヌルッと出ていき、その感覚もまた俺には刺激になって声が漏れた。  

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