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21 ちょっとだけ笑顔になろうかな ※

「あ……っ、と……っ、とぉ……ま……」  冬磨の顔を見ながら抱かれる幸せに、今日はいつも以上に震えが止まらない。  冬磨はずっと俺を見つめていて、ときどき吐息と一緒に顔をゆがめ、俺の声に反応して破顔した。  こんなにずっと見つめ合うのは初めてで、それだけで俺は全身がとろけてしまう。  冬磨は俺の目を見てどう思っているんだろう。  なにも言わないってことは、最中の熱がこもってるだけだと思ってくれてるのかな。  無表情だって保ててないけど……。  大好きがあふれて幸せで、胸が張り裂けそう。  冬磨……大好き。  キス……したいな……。冬磨と繋がりながら、キスしたかったな……。 「天音、ほんとお前、可愛いな……。想像以上で……ビビるわ……」  冬磨がそんなことを言って優しく微笑むから、また涙がにじむ。  こんなタイミングで泣いたらさすがにだめだ。だめだってば。  俺は慌てて腕で目元を覆って、さりげなく涙を拭う。でも、次々と涙があふれ出てきて拭いきれない。 「せっかく目開けてくれたのに隠すなよ」  冬磨が俺の腕を取り、目元がさらけ出された。  どうしよう……っ。  と焦ったけれど、冬磨は優しく俺の目尻にキスをした。 「お前、後ろからのときもそうやって一人で泣いてたんだろ」  涙の理由を問い詰めるような雰囲気ではなかった。ただひたすらに優しくいたわるような声色で、反対の頬も指で涙を拭ってくれる。 「さっきもマジで焦った。すげぇとろけきった顔してると思ったら急に怯えて泣き出すから……。ごめんな? 今まで気づいてやれなくて」  冬磨の言葉に驚いた。  俺……怯えてた……?  そ……うか。冬磨に切られたらどうしようって、ずっと怖かった。それが怯えてるように冬磨には見えたんだ。 「まだ怖いか? ごめん。もっと優しく抱くから。だから、もう一人で泣くなよ。大丈夫。ちゃんと克服できるって信じてろ。大丈夫だから。な?」  まるで俺の心の奥深くに言い聞かせるように、冬磨が優しく言葉をつむぐ。  今でもこれ以上ないくらいに優しく抱いてくれているのに、これ以上どうやって……。 「ん、……ぁっ、とぉま……」  優しすぎるよ、冬磨。  俺なんて、ただの嘘つきなのに……。  ごめんね、冬磨。本当にごめんなさい……。 「と……ま……っ……」  大好き、冬磨。大好き……。 「あ……っ、ぁぁ……っ……」 「天音……悪い。俺もうかなり限界なんだけど……お前まだイけねえ……よな?」  はぁ、と切なげに吐息を漏らし、余裕のなさそうな冬磨の顔を見て、一気に後ろがうずく。 「……っ、おまっ、締めんな……っ、……はっ……」 「イッて……とぉま。おれも……イきそう……っ」 「……マジ? ……わかった」  冬磨はそう言うと、俺の足を持ち上げ肩にかけた。  そして動きが止まる。 「と……ま……?」 「…………くっそ、ここもかよっ!」  冬磨が突然叫んで怒り出す。  視線の先は、俺が太ももに付けたキスマーク。あ……忘れてた。 「お前なんでこんなとこにまで付けられてんだよ……っ」  クソセフレめ、と悪態をつき、冬磨は怒りを鎮めるかのように深い息をはいた。 「あとでまた重ね付けしてやる」  そう言葉を吐き出して、気を取り直すように腰を動かした。 「……ん……っ、ぁ……っ……っ」  でも、数回動いてすぐに動きを止めると「あーっ、くっそっ。チラチラ視界に入るっ」と言い捨て、俺の中から出ていった。 「え、とぉま……?」 「ちょっと待ってろ」  またすごい真顔で、冬磨が俺の太もものキスマークに唇を押し付け吸い付いた。  俺がストローで付けたキスマークに対抗意識を燃やす冬磨が可愛すぎる。 「ぷは」  俺は思わず笑ってしまった。 「あま……」  びっくりした顔で俺を見て固まる冬磨に、慌てて無表情を装った。 「だ、から……クソセフレのおかげって……複雑だっつってんじゃん」 「……知らねぇよ、そんなん」  クソセフレなんていないのに、と思うとまた口元がゆるんだ。  冬磨が本当に複雑そうに俺を見るから、可愛くて無表情に戻れない。 「……あーもー……。ほんとお前、もっといっぱい笑えよ。可愛いから」  当初の設定のビッチ天音は笑うキャラじゃない。それに素が出てしまうから笑わないようにしていた。  これからは、少しだけ笑ってもいいかな。それでもビッチ天音で通せるかな。  冬磨が喜んでくれるならいくらでも笑顔でいたい。でも、それは危険だからちょっとだけ。ちょっとだけ笑顔になろうかな。 「冬磨、それ、もういいだろ? 早く……しよ?」  少しだけ柔らかい表情で冬磨を誘った。  冬磨は一瞬固まって、そしてクスクスと笑い出した。 「やっぱ天音すげぇわ」 「……なにが?」 「クソセフレのせいでちょっと萎えたんだけど。今ので完全に復活した」  今のって……え、それだけで? 「ほんと、天音は特別」  冬磨は俺の足をチラッと見て、肩にかけるのをやめてそのまま中にゆっくりと入ってきた。 「あぁ……っ、……ん……っ」 「天音、入れるだけで気持ちよさそ……」 「……ん、きもち……ぃ……」  冬磨と見つめ合いながらゆっくりと繋がる。  いつもの何倍も幸せで泣きたくなる。  また言われた『天音は特別』という言葉が頭の中でこだましていた。酔いしれそうになって、意識して気を張った。  だってそんなこと言われたら誰だって勘違いしちゃう。もしかして勘違いさせたい……?  そしてきっと、冬磨に落ちたらそこで終わり。さようなら。  そうなるかならないか、試してるんじゃないかなって気がしてくる。  俺は騙されないよ。  だってもう落ちてる状態から偽ってる。  絶対……終わらせたりなんかしないんだから……。    

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