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27 俺だけに溺れてほしい…… ※
キスマークの仕事が終わった冬磨は、途中から同時に準備した俺の孔にたっぷりとローションをたらして馴染ませながら、耳元でささやく。
「前と後ろ、どっちがいい?」
俺に選ばせてくれるのは嬉しいけど、ここは冬磨が強引に前からでやってほしかった。
前からって答えるの、恥ずかしい……。
そう思ってからハッとした。違うよ。今はビッチ天音だ。ビッチ天音はそんなことで恥ずかしがんないよね。……よね?
ビッチ天音の台詞を想像した。考えて考えて、でも、なぜかやっぱり恥ずかしがってるビッチ天音しか浮かばないっ。なんでっ?
どっちでも恥ずかしいんだとわかると、みるみる顔に熱が集まってくる。
「天音、選べない? じゃあ俺の好きなほうな?」
クスクス笑って、冬磨が俺の身体を仰向けにする。慌てて腕で顔を覆ったのに、すぐに冬磨の手によって顔から剥がされた。
目が合うと、冬磨はゆっくりと目を見開いて「あま……」と口を開いたまま固まった。
湯気が出そうなほど顔が熱い。どうしようっ。お願いだから好きってバレないでっ。
「もしかして、前がいいって言うのが恥ずかしくて……とか?」
好きってバレなくてよかったけれど、図星をつかれてますます顔が熱くなる。
「はぁ……ほんと……なんか俺、毎回お前にやられるんだけど……。それ絶対計算じゃねぇってわかるから……可愛いしかないんだよな」
「……お、お前のキスがしつこいからっ。ちょっと興奮しただけだっ」
「あー、はいはい。前からのが気持ちいいって言うの、そんな恥ずかしいのか。ほんと可愛いな、天音」
「べっ……つに、そんなんじゃねぇしっ。どっちも好きだから選べなかっただけだっ」
「ん、わかったわかった。今度からは基本前からにするから安心しろな?」
目を細めて優しげに微笑んで、冬磨は俺をふわっと優しく包み込むように抱きしめた。
頬にちゅっとキスをして「入れるよ?」と甘くささやく。
バクバクと破裂しそうなほど暴れてる心臓の音を、全部聞かれていそうで怖い。
冬磨は顔を上げて、俺を見つめながらゆっくりと中に沈み込んで来た。
「……んン……っ、と……ま……っ……」
「天音。俺のキスマークだらけのお前、マジ最高」
俺も、冬磨のキスマークだらけの身体で抱かれるの……幸せすぎる。
冬磨の首に腕を回せば、腕についたキスマークが目に入る。
冬磨が俺の足を肩にかければ、キスマークだらけの足が目に入る。
冬磨に与えられる快楽だけでもどうにかなりそうなのに、その視覚でも犯された。
「ぁ……っ、とぉ……ま、……ぁっ……」
「天音、すげぇとろけてる。この顔も、俺だけだろ? 他の奴は見てねぇよな?」
「……ない……っ、みて……ない……っ」
「ん、絶対見せんなよ、クソセフレなんかに」
冬磨の顔が、嫉妬しているように見えた。
気持ちよさに顔をゆがめてるせいかな。きっとそうだ。それでも、さっきの嫉妬の欠片もない冬磨とは声色も全然違う。喜びが胸にあふれて涙がにじむ。
「天音、気持ちい? とろけて瞳 まで潤んでる。最高に可愛い……」
「ん……きもち……ぃっ、と……ま……っ」
「天音……ずっと俺の名前呼んでろよお前。マジですげぇクる……」
そんなの、喜んで呼び続けるよ。
「と……ま……っ、とぉま、とぉ……ぁ……っ……」
「ふはっ、なに? とうあ?」
俺が名前を言えないように、冬磨が奥を突いてくる。
「ん……っ、ずる……いっ、と……まっぁ……っ」
「もっと呼んで、天音」
「んっ、ぁ……とぉ……っ、あぁっ」
名前を呼んでと言いながら、呼べない俺をクスクス笑う。
冬磨が俺で遊ぶから、あっという間に絶頂がやってきた。
「ぁぁ……っ、とぉま……っ……っ、おく……っ、もっと……っ」
「奥? いいよ、もうイきそう?」
「ん……イク……っ、ぁ……っ……、も……っ……」
冬磨が奥を深く突きながら、肩にかけてる俺の足にジュッと吸い付いた。
「はぁっ! んっ!」
「は……やば。天音の声、ほんとやばい。聞くだけでイッちゃいそ……」
ズンッと冬磨が最奥に何度も打ち付けてきた。
「あっ、イク……っ、あ……っ……っ、あぁっ! とぉま……っ!」
ぶるっと震えて冬磨にしがみつく。俺の中の冬磨が、硬さを保ったままドクドクいってるのを感じた。
「…………はぁ……やべ。持ってかれるかと思った」
「ん……っ……と……ま……」
倒れ込んできた冬磨の首筋が目の前にきて、俺はそこにキスをした。
首に腕を回して首筋にキス。これで唇にキスをしてるつもりになる。幸せ……。
「天音。そこ、キスマーク付けて」
「…………え?」
「天音も一個くらい付けろよ、俺に」
「…………っ」
そんな不意打ちはやめてほしい。気がゆるみすぎていてあっという間に涙があふれてこぼれた。
俺……冬磨にキスマーク付けていいの……?
「……ほ……他のセフレ……は……」
「ん?」
「怒る……かもじゃん……」
「どうでもいいな、そんなの」
それはどういう意味なんだろう。
怒っても放っておくの?
それとも切るの?
それとも……他のセフレにもキスマークを付けさせる……?
次に会うときはキスマークが増えてるかもしれない。
俺はすぐ、なんでも自分だけが特別だと勘違いしそうになるから、ちゃんと覚悟しておかなきゃ……。
冬磨の首筋に唇を押し付けて、本気で吸い付いた。吸い付いてから、冬磨が外回りのある仕事だと思い出す。見えたりしないかな。大丈夫かな……。
唇を離すと、そこにはくっきりと付いたキスマーク。ワイシャツに隠れるかな……。
「付いた? キスマークってなかなか付かないよな?」
顔を上げた冬磨が俺をまっすぐに見る。
やばい、涙が……っ。
なんの涙かと聞かれたら答えられない。どうしようっ。
冬磨のことになると俺は泣き虫すぎる。本当に嫌になる。
「天音、どうした? また怯えてる。いまはなにも怖いことねぇぞ?」
冬磨は親指で優しく涙を拭いながら、目尻にキスをした。
また俺は怯えていたらしい。冬磨に涙を見られる怖さのせいで、俺の嘘がどんどん本物らしくなっていく。
バレるよりはいいはずなのに、胸が苦しい。
「冬磨……」
「ん?」
「ありがとう……冬磨」
こんな嘘つきな俺にいつも優しくしてくれてありがとう。
俺は何を冬磨に返せばいいんだろう。
してもらってばかりで、何も返していない。
「……どうした、ずいぶん素直じゃん。あ、まだ突っ込んだままだからか?」
からかうように笑う冬磨に、心の中でまたありがとうと伝えた。
冬磨は俺がトラウマのことをあまり気にしないように、わざとふざけてくれている。
本当に優しすぎて……冬磨を俺だけのものにしたくなる。
この優しさを、独り占めにしたい……。
「冬磨……もっとちょうだい。もっと奥まで……きて……」
冬磨のふわふわな髪の毛に指を通し、引き寄せて頬にキスをした。
「……っ、おまっ、……はぁ……もうほんと参る……。煽った責任取れよ?」
言葉は強気なのに、冬磨の動きはどこまでも優しい。
「……ぁ……っ、ぁ……んっ……」
「今日は抱き潰すから。覚悟しろよ」
抱き潰されたい。
冬磨の限界まで俺を抱いてほしい。
冬磨に抱き潰されるなんて幸せすぎる。
他の人が入り込む隙なんてないくらい、俺だけに溺れてほしいよ……冬磨。
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