いつまでも動かない冬磨に不安になったとき、冬磨は指を引き抜いて顔を上げ、ズボンをずらしてそれを取り出すと、そのまま俺の孔にあてがった。 「と……とうま、ゴム……」 「……いらない」 「えっ？　あぁっ……！」 　ズンッと一気に中に入ってきて、今までされたこともないほど激しく、冬磨は腰を動かした。 「んっ、あっ、や……っぁ……」 「あまね……っ」 　冬磨どうしてっ。 　生ではやらないって断ったのは冬磨なのに、どうしてっ。 　入れた瞬間から激しいのも、服を着たままされるのも、初めてで驚いて戸惑った。 　冬磨は俺の首元に顔をうずめて、荒々しく動く。 　ゆっくり優しくとろけるような抱き方しかされたことがないから、いま俺を抱いてるのは本当に冬磨なのかと、とても信じられない思いだった。 　激しく襲ってくる快楽に意識が飛びそうになる。 　初めての抱かれ方に怖くて不安で、せめて冬磨の顔が見たかった。顔を見ながら繋がりたい。そう思ったけれど、冬磨の顔はずっと上がらない。 「んっ、あっ、と……ま……っ」 「あま……ね……っ」 「やっ、ぁっ……！」 　 　目の前にチカチカと星が飛んで、ぎゅうっと冬磨にしがみつく。 「あっ、と……とぉまぁっ！」 　あっという間に俺は果てた。 　いつもはここで俺を休ませてくれる冬磨が、今日はそのまま激しく動き続ける。 「んっ、や……っ、やぁっ、とぉま、とぉ……っ、あぁ……っ……」 　もう何がなんだかわからないままに冬磨に抱かれた。 　冬磨が顔を上げてやっと目が合ったと思ったら、どんどん顔が近づいてきた。 「と……とぉ……」 　唇同士がふれあう寸前、冬磨はスッと顔を背けて唇のすぐ横にキスを落とした。唇にキスをされるのかと思って心臓が破裂しそうだった。 　冬磨はふたたび俺の首元に顔をうずめて、また顔が見えなくなった……。 　もう、何回イッたのかもわからない。 　しがみつく腕にもそのうち力が入らなくなって、ぐったりする俺を冬磨は抱き続けた。 　 「あまねっ、あまね……っ、ぅ……っ……」 　冬磨のものが中でドクドクと脈打ち、冬磨の熱いものが俺の体内に広がっていく。胸に熱いものが込み上げた。 　ずっと……ずっとほしかった冬磨の熱。俺の中が冬磨で満たされていく。 　愛おしすぎる自分のお腹を、そっと手の平で撫でた。 　グッと喉がつまって、涙があふれ出て止まらなかった。 「……かった…………」 　冬磨のこぼした言葉が耳元に響く。 　かった……勝った……？ 　なんのこと……と眉を寄せてからハッとする。 　以前キスマークにも『勝った』と言っていた。それなら今の『勝った』は一つしかない。生でやったことだ。 　また勝ち負け……？ 　またセフレに対抗意識を燃やしてた……？ 　冬磨が何かに傷ついて泣きたい気持ちなら、癒してあげたいと思った。どんなに乱暴に抱かれて不安に思っても、冬磨だから嫌じゃなかった。 　でも、またただの対抗意識だったの……？ 　胸がチリチリと焼ける。 　幸せの涙の種類が別のものに変わりそうになったとき、頬が濡れるのを感じた。 　自分の流した涙かと思ったけれど、俺のは目尻からこぼれて頬は濡れない。 　じゃあなんで……。 「とぉま……」 　呼びかけてもゆすっても冬磨は動かない。 　脱力したように俺に覆いかぶさる冬磨の身体をそっと横に寝かせると、冬磨は涙を流して眠りに落ちていた。 「とぉ……ま……」 　どうして泣いてるの？ 　いったい何があったの？ 　泣きたいくらい何かに傷ついているのに、それを忘れるくらい俺のセフレに対抗意識を燃やした……？ 「あまね……」 　切なげに名前を呼ばれてドキッとする。目を覚ましたのかと思ったけれど違った。 「あま……ね……」 　つぶやきと一緒に、冬磨の目尻から涙がこぼれた。 　ドクドクと心臓が暴れ始める。 　寝ながら涙をこぼして俺の名を呼ぶ冬磨に、ありえない期待が胸に膨れ上がった。 　 　本屋の前で俺をじっと見ていた冬磨。 　そのあと泥酔するくらいお酒を飲んで、俺を呼び出した。 　玄関で痛いくらいに抱きしめられた。 　キスマークがないことにホッとしてた。 　セフレに対抗意識を燃やして、ゴムも無しに繋がった。 　冬磨は、敦司に嫉妬した……？ 　これって、独占欲……？ 　どうして……。どうして冬磨……。 　ドクドクと心臓が壊れそうになる。 　そこまで考えてから、スッと冷静になった。 　そうだった。俺が捕まらなかったらほかのセフレがいる、と冬磨が言ったのは先週の話だ。 　それに、シラフでは生を断られた。 　そうだった……今の冬磨はただの酔っ払いだ……。明日になったら今日のことなんて覚えてすらいないかもしれない。 　だから違う。 　だから期待しない……絶対に……。 　でも……そのかわり、今度からは俺からも誘おうかな……。 　ほかのセフレとやる暇がないと思ってもらえるくらい、もっと冬磨と一緒にいたい。 　たぶん……冬磨のセフレの中では、俺はきっと……お気に入りだと思う。だから、俺から誘っても会ってくれる気がする。 　そして、もし冬磨に『ほかのセフレは？』と聞かれたら、もうセフレは冬磨だけでいい、くらいは言ってもいいかな……。だめかな……。