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47 夢かな……

 冬磨のキスはいつまでも終わらなかった。  とろけるような優しいキスに脳が溶けてしまいそうだった。  冬磨の舌が俺の舌に優しく絡みつく。唇を甘噛みされ、ちゅっと音を鳴らしては「好きだよ、天音」とささやかれ、また唇が合わさった。 「……ん……っ、と……ま……」    冬磨と……本当にキスしてるんだ……。  ずっとずっとしたかった冬磨とのキス。  冬磨の好きという言葉も、優しいキスも、絶対にありえないと思っていたことが今現実になっている。  幸せすぎて夢みたいで、スーツを握る手が震えた。 「天音、お前が俺を好きって……ほんとに夢じゃねぇよな?」  冬磨が俺を見下ろして瞳をゆらす。 「……好き…………」  好きという言葉を素直に口にできる喜びに唇が震える。  一度口にしたら、何度も伝えたくなった。 「とぉま、好き……っ、ぅ゙ぅー……好きぃ……っ」  俺の言葉に嬉しそうに破顔する冬磨に、涙腺が崩壊して嗚咽が漏れる。 「天音」  ぎゅっと抱きしめられて、幸せでクラクラとめまいがした。  冬磨の背中に震える腕を回してぎゅっと抱きしめた。 「と……ま……」 「はぁ……。なんでお前、そんな可愛いんだよ……ほんと」 「とぉま……好き……」 「やばいな……。もう俺、幸せすぎて死んじゃうかも」 「……やだ」 「ふはっ、かわい」  顔を上げた冬磨がちゅっちゅっと唇にキスをくり返す。 「とぉ……ま」 「ん?」 「おれ……」 「うん、なに?」 「冬磨の知ってる俺じゃ……なくても……本当に……」  本当に……いいの? 「ビッチ天音じゃ、なくても……本当に……いいの?」 「それ、何度聞いても可愛いんだけど。ビッチ天音って」  冬磨がクスクス笑って、また何度も唇にキスを落とす。  そのたびに俺はふるっと身体が震えた。 「本当の天音も知ってるよ」 「え……っ」 「ポトフ食ってるときの天音、あれ素だろ?」  言い当てられて息を呑む。 「あとお前、俺の前では笑わないようにしてたろ? だから笑った天音も本当の天音。俺が、可愛くて悶絶したときの天音は全部本当の天音」  そう言って冬磨はふわっと笑った。 「線香上げたときに長ぇあいさつしたのも本当の天音。俺の前では泣いていいよって言ったのも。結局、ビッチの演技してる天音だって全部本当の天音だろ? 俺は天音の全部が好きだよ」 「とぉ、ま……」 「だから、もうビッチ天音は封印。な?」  ビッチ天音を封印された。  もう冬磨の前で、演技しなくていいんだ……。  本当の俺のままで……いいんだ。  どんどんあふれてこぼれる涙を、冬磨が指で優しく拭う。 「んで、なんでいつも抱かれながら泣いてたんだ? 身体の震えもさ。トラウマじゃないなら、なんで?」 「……し……」 「し?」 「幸せ……で……」  冬磨が目を見開いた。 「え、だって怯えてただろ?」 「……好きってバレたら……終わっちゃう……から、怖くて……」  俺の答えに目を瞬いた冬磨は、深い息をつきながら倒れ込んできた。 「天音……俺を殺す気……?」 「え……っ?」 「心臓痛てぇ……」 「えっ、だ……大丈夫っ?」 「……だめ。もう一生、天音がそばにいてくんなきゃ俺死ぬから」 「えっ?」  冬磨の心臓の痛みと、俺が一生冬磨のそばに……って全然繋がらない。 「もう天音以外なんもいらない。ずっと俺のそばにいて、天音」  耳元に響いた冬磨の言葉が、頭の中で何度もこだまする。  ――――もう天音以外なんもいらない  ――――ずっと俺のそばにいて  本当にこれは現実なの……?  やっぱり俺、夢見てるんじゃないかな……。 「天音? 返事くんねぇの?」  冬磨が頬にちゅっとキスをしてから俺を見下ろした。 「……やっぱり……夢……かなって……」 「ふはっ。わかる。俺も夢みたい。でも、夢じゃねぇよ」 「冬磨……本物……?」 「もう一回キスしたら、本物ってわかるか?」  優しく笑う冬磨の顔が近づいてきて、ふたたび唇が合わさった。  冬磨の熱い舌が俺の舌に優しく絡む。 「……ん……っ、ぁ……っ……」  上顎を舐められると身体がビクビクと震えた。  今が本当に現実で冬磨が本物なら、俺は本当に冬磨と恋人になったの……?  もう、いつでもキスができるの……?  ――――もう天音以外なんもいらない  ――――ずっと俺のそばにいて  冬磨の言葉も、夢じゃないんだ。  夢じゃ……ないんだ。 「と……ま……っ……」 「ちゃんと本物だってわかった?」  そう俺に笑いかける冬磨の首に腕を回して、ぎゅっと抱きついた。 「あ、天音?」 「お……おれ、……俺はもうずっと、冬磨以外なにもいらなかった……っ。冬磨だけがほしかった……っ。ずっと……ずっとずっと冬磨のそばに……冬磨のそばにいたい……っ」  伝えた瞬間、苦しいくらいに抱きしめられた。 「天音……っ」 「とぉま……っ」  冬磨の熱に包まれる幸せにめまいがした。  冬磨が恋人。  俺の……恋人。  本当に……恋人なんだ……っ。 「……もうほんと限界。天音……抱いていい?」 「だ……いて。抱いて……冬磨……」 「天音。もうずっと俺のそばにいろよ」 「ぁ……っ……」  耳に直接伝えられたその言葉に、俺の身体はゾクゾクと震えた。  

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