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イチャイチャしよっか SS

「天音。日曜日に飲みに行くのって平気か?」    一緒に住むようになって初めての土曜日。寝る準備も終わっていつものように冬磨の……俺たちのベッドに横になったところで、冬磨が聞いてきた。   「うん、平気だよ? 平日だって飲み会あったりするし、全然大丈夫」 「そっか。じゃあ明日ちょっと早めに飲みに行こ」 「でも、なんで日曜日? どこに行くの?」 「ちょっとね。お前連れていきたいとこあって。明日まで内緒」    内緒……冬磨可愛い。  冬磨が腕枕で俺を抱きしめて電気を消す。   「おやすみ、天音」 「おやすみ、冬磨」    いつもおやすみのあいさつをしてから、俺はドキドキしてしまう。  だって、冬磨はおやすみと言ってから、俺を抱いたり抱かなかったりする。  だから、今日はあるのかないのか毎日ドキドキする。  でも、昨日は抱き潰されるくらいに抱かれたから、きっと今日はない。ないと思う。そう思うのに、ドキドキして胸が苦しい。   「天音」 「う、ん?」 「そういえば確認するの忘れてたんだけどさ」 「ん、なに?」 「お前って結局、性欲は強くねぇんだよな?」 「…………っ」    そういえばそんな設定だったっ!  ビッチ天音は性欲が強くてトラウマがあっても抱かれたい設定っ!   「違うんだろ?」 「……う……うん。違う。た、たぶん……普通」 「そっか。うん。聞いといてよかった。じゃあ、本当におやすみ」 「おや、すみ」  本当にってことは今日はないんだ。  ホッとするよりも寂しくなった。  性欲がどうとかよりも、冬磨とふれ合いたいって気持ちは……性欲以上に強いんだ。 「……冬磨は?」  二回もおやすみって言われたのに、聞かずにはいられなかった。 「ん?」 「冬磨は……性欲強いの? 普通?」 「……俺は、いいんだよ。気にすんな」    気にすんな、ってどういう意味……?   「冬磨は、昨日いっぱいしたから今日はいい……って感じ?」 「……まぁ、うん、そうかな?」 「……そっか」    冬磨の性欲……強ければよかったな。残念。  そんなことを思いながら、冬磨の空いた手にそっと手を重ねる。冬磨も指を絡めて恋人繋ぎをしてくれて、ドキドキして苦しくて冬磨の胸に顔をうずめた。 「ごめん……天音」 「え?」 「ほんとのこと言っても、引かないでくれるか?」 「ほんとのこと?」  何か嘘をついてたの? 「言って? ほんとのこと。俺、今までいっぱい冬磨に嘘ついてきたから、もう嘘は絶対つきたくないんだ。だから、冬磨もなんでも本当のこと言って?」  大丈夫だよ、という意味を込めて、繋いでる手をぎゅっと握った。 「……ほんとのこと、言うとさ」 「うん」 「……抱きたいよ、毎日。お前のこと」  どんな本当のことを教えてくれるのかとドキドキしてた俺は、それを聞いて心臓が爆発してしまうかと思った。  一気に顔に熱が集まって、もう湯気が出そう……。 「でもさ。毎日抱いたらお前壊れちゃうだろ。それにさすがに引くだろって思ってさ。だから、必死で我慢してる」  冬磨は付き合うようになってから、一日置きか二日置きに俺を抱いて、連続で抱くことは一度もなかった。  一緒に住むようになってからもそれは変わらない。  ずっと、我慢してたの? 「冬磨……俺ね」 「うん?」 「性欲は……よくわかんないけど、冬磨には毎日ふれたいし、ふれてほしいよ。すっごく幸せになれるから。……あ、もちろんこうやって腕枕で眠るのもすごく幸せだよ? ……でも、冬磨のキスも、唇も、優しく撫でる手も、すごくすごく……すごく幸せになれるから……毎日でも、いいよ? 冬磨がしたいなら……毎日でも抱いてほしい……」  途中からすごく恥ずかしくなって声が小さくなってしまった。毎日でも抱いてほしい……なんて、それこそ引かれちゃったかも……。  冬磨が黙り込んで何も言わない。  静かな部屋にドクドクと自分の心臓の音が響いてる気がした。  でも、その音は俺だけじゃなくて、冬磨の胸からも聞こえてくることに気づいてハッとした。  驚いて顔を上げようとしたけれど、冬磨の腕が俺の頭を抱き込むようにしているから動けない。 「とぉ……ま?」 「ほんとさ……」 「う、ん」 「お前といると……心臓壊れそう……」  冬磨は心臓壊れそうとよく言うけど、それは俺も同じなのに。  はぁぁ……と、すごく深い息をついて冬磨がぎゅっと俺を抱きしめた。 「いや、ごめん。あんなこと言ったらお前、そう言うしかねぇよな、ごめん」 「え、冬磨、違うよ?」 「いいから。もう寝るぞ」  どうしよう、冬磨が誤解しちゃった……。  もっとちゃんと本当の気持ち話さなきゃ。 「あ、あのね冬磨」 「もう寝るぞって」  優しく頭をくしゃっと撫でられる。  大好きな冬磨の手。  大好き……愛してる……冬磨。 「俺ね。さっき冬磨が『本当におやすみ』って言ったとき、ちょっと寂しかったんだ。今日は……しないんだなって思って」  本当の気持ちを伝えるって、なんでこんなにドキドキするんだろう。  恥ずかしい……。でも、ちゃんと冬磨に伝わってほしい。 「俺、毎日……抱いてほしいって思ってるよ? 本当に……」  思い切ってもう一度はっきり伝えた。  すると、また冬磨が深い深い息をついた。  以前の俺なら、そんな冬磨の反応に不安や恐怖を感じたと思う。  でも、今は平気。もう怖くない。だって、冬磨が毎日俺に『愛してる』と伝えてくれるから。多少呆れられることはあっても、嫌われることはないかなって、そう思えるから。  ずっと不安ばかりだったのに、今はもう不安はない。幸せしかない。  冬磨が優しく頭に口付けをしてくれた。  そして、ゆっくりと俺の頭を枕に沈ませて見下ろしてくる。  少し困ったように眉を下げつつも、極上に優しい瞳で俺を見つめた。 「天音。あんま俺を暴走させんなよ。お前をひどくしちゃうじゃん」  優しく頭を撫でながら、そんなことを言う。 「冬磨はいつでも優しすぎるから大丈夫」 「でもな?」 「冬磨……キス……したい」  冬磨にふれてほしくて期待でいっぱいになっちゃった。  このまま寝るのはもう嫌だ。  冬磨の首に腕を回すと、冬磨はどこか諦めたように笑って俺の唇を優しくふさいだ。 「……ん……っ……」 「天音……」 「と……ま……」  ゆっくり溶かすようなキスをして、唇が離れていった。 「天音。イチャイチャしよっか」 「イチャイチャ……?」 「お前の後ろはちゃんといたわってやんなきゃな?」 「いたわる……」 「後ろは無しでイチャイチャするだけなら、毎日ふれ合えるよな?」 「……後ろも、大丈夫だよ?」  冬磨には何も我慢してほしくない。 「俺も毎日天音にふれたいよ。でも無理はさせたくねぇの。だから後ろは毎日しない。イチャイチャして、最後は口でイかせてやるから」 「あ……じゃあ、俺も口で……」 「ん、一緒に舐め合おっか」  舐め合う……という言葉に、なんだかものすごく恥ずかしくなって顔が熱くなった。 「……うん」 「ふはっ。抱くときより赤くなってるし。ほんと可愛いな天音」  冬磨は優しく笑いながら唇を合わせた。 「……ん……、と……ま……」  冬磨は『毎日ふれ合えるよな?』と言ったから、抱き合わない日もイチャイチャするってことだよね。毎日冬磨にふれてもらえるってことだよね。  今日はあるのかないのか考えるのもドキドキするけど、毎日イチャイチャするって決まったら、毎日もっとドキドキしちゃいそう。  どうしよう……俺、毎日心臓もつのかな……。  でも、冬磨ともっとふれ合いたい……。 「愛してるよ、天音」 「ん……、あい……してる、とぉま……」  後ろは使わない。  冬磨の言葉通りだったけれど、使っても使わなくてもトロトロのドロドロに溶かされて何度もイかされて、俺は電池が切れたように眠りに落ちた……。 終 〈 日曜日の飲み会へ続く 〉  

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