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【出会いの春】第1話 episode.1
真新しい制服、真新しい靴を履き、俺は眠たい目を擦りながら自転車にまたがる。
「早くしないと入学早々遅刻するわよ」という母さんの声を聞き流し、自転車をこぎ出した。
今日は高校の入学式。
誰もが新しい出会いを期待して胸をドキドキさせながら学校に行くだろう。
もちろん俺も例外ではない。
可愛い女子がいることを期待している。
中学の頃から、俺の周りには人が沢山集まることが多かったし、それなりというか、だいぶモテてきた。中学三年間で何回告白されたか、数えられないくらいには。
その中の何人かとは付き合ったことがある。
でも、俺は本当に好きで付き合っていたつもりなのに、「私のこと、ほんとは好きじゃないでしょ」とか「思ってたのと違う」とかそういう理由で必ず俺が振られてしまう。
もちろん、俺は好きだったから振られたときは正直めちゃくちゃ悲しいし、泣いたことだってある。
だけど、勝手にイメージをつけてそれで残念がられるなんてありえなくないか?!
俺はそのままのありのままの女の子を好きになって受け入れてたのに、イメージと違ったら振るなんて、俺のことが好きなんじゃなくて、俺の雰囲気やイメージに恋してただけなんじゃないか!
この通り、俺は童貞だし、振られるもんだからキスもしたことない。というか、そもそも一瞬で振られるから手もまともに繋いだことなんてないくらいだ。
見た目はそこそこに、いい自信があるのに、経験がないなんて、俺は悔しい!
友達はみんなシたことあるのに……。
胸がドキドキしていたのに、嫌なことをどんどん思い出してしまい、自転車のハンドルをギュッと握る。
前を向けば大きな下り坂が広がっており、風を受けながらくだっていく。
下っていくと目の前に大きな桜の木があって風で花びらが目の前に広がったと同時にホコリが目に入った。
「うわ、最悪だ」
自転車をいち早くとめ、ブレザーの袖で大雑把に目を擦る。
何回か目を瞬き、痛くなくなったところで、今日は最悪だと桜の木に目を向ける。
そして、俺はそこから視線が動かせなくなった。
というか、時がとまったかのような錯覚を起こしたかのようだった。
桜の木の花の中には一人の男がたっており、その姿は桜の中でさえ、霞まないほど綺麗な人だった。シュッと尖った鼻に、切れ長の色素の薄い目。身長も高く、スタイルがいい。
全く同じ制服を着ているのにも関わらず、その存在は綺麗すぎて異質感さえ感じる。
言葉を失って、じっと見つめていると、目が合った。
慌てて視線をそらそうとするけれど、射抜かれて動けない。ぼーっとしてしまう。
『ねぇねぇ、君。俺と友達になろうよ』
俺は桜の木の下にいる男にそっくりな、まだ十歳にもなっていない男の子に手を差し伸べる。
だけど、男の子はプイッと俺と反対の方向を向いて唇を尖らせる。
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