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【新入生レクリエーション】 第1話 episode.3

「何じっと見つめ合ってんだよ」 突然背後からトンと肩を叩かれ、記憶から現実に呼び戻された。 聞き慣れた声に誰であるかを確信しながら振り向くとやはりそこには呆れたような顔をした宏斗が立っている。 「……あぁ、宏斗。おはよう」 助かったと思いながら何もなかったかのように宏斗に挨拶をする。 正直、あの言葉にどう答えればいいのか全くわからなかった。それにあんな記憶を見たあとに朝陽の顔を直視できるとは思えない。 「あれ、雅さん。ちょっと顔赤くないですか〜?」 「そんなことないから!」 「そんなに焦っちゃって!誰と見つめ合っていたのかな〜?」 ここぞとばかりに宏斗は俺をからかってくる。 その顔の笑みといったら俺に女の子と付き合ったことを報告してくるときの表情とそっくりだ。 宏斗は俺の横にいる朝陽を見る。 すると、口をパクパクさせながら後ずさった。 「え…あ、え、は?ま、真野朝陽ー?!」 「そんな大きな声出してどうした?」 「だって、学校で入学初日から女子人気をかっさらっていった真野朝陽がお前の知り合いと思ってなかったし、何より……顔綺麗すぎないか?」 宏斗に顔の綺麗さが褒められた朝陽は宏斗と初対面なのもあってどんな反応をしたらよいか困っている。  そんな朝陽に変わって俺が「そうだろ?朝陽はめちゃくちゃ綺麗なんだ」と自信満々に答えると「なんでそんな得意げなんだよ」とひいたような顔をして宏斗に返される。 だが、朝陽は困惑したような表情からいつもの表情で俺を見ていた。 目が合うとにこっと微笑んでくれる。 宏斗はその横であごに手を当てて何やら考え込んでいた。 そして何かが分かったかのような表情になり、喋りだす。 「……もしかして、昨日綺麗な人が知り合いにいないかって聞いてたのって真野朝陽のことか?あぁ、そういうことなんだな〜」 何かに納得したように頷いている。 「なんだよ?」 「いくら雅が女の子好きだったとしてもこんな綺麗な男に迫られちゃ拒めないよな〜。ごめんな。邪魔して」 両手を合わせ、謝りながら通学路を一人で歩いていこうとする。 「急にどうしたんだ?」と聞くと振り向き、右手の親指を立てる。まるで頑張れよといっているよう。 宏斗はそのまま、一人で先を歩いて行った。 「ごめんな。びっくりしただろ?」 「ううん」 「……じゃあ、そろそろ行こっか」 「うん」 たった一言。返事をされるだけなのに俺は嬉しくなる。 「あーさひっ!」 「ん?」 「朝陽〜!」 「なに?」 彼は名前を呼んだだけで反応し、答えてくれる。それが幸せでたまらない。 「呼んだだけー!」 朝陽も俺も笑う。 その綺麗な笑顔を見て、朝陽と俺の記憶がどれだけ辛くても悲しくても思い出すと心に誓った。

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