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【新入生レクリエーション】第1話 episode.2

「俺、お前とならいくらでもいれる気がする」 「どうして?」 朝陽は可愛らしく首をちょこんと傾ける。 すると、彼の髪から桜の花びらがアスファルトの地面に一枚、ひらひらと舞い落ちた。 「だって、昨日出会ったばっかなのに、まるで昔からの友達みたいに話せてる」 俺はわざと口角を上げて笑う。 それを見て、つられたのか雅も少しだけだが、声を上げて笑う。 そして、しばらく経ったあと、「……ねぇ、雅」と朝陽が歩くのをやめ、立ち止まった。 「どうした?」 俺も一緒に立ち止まり、朝陽の言葉を待つ。 「……もし僕たちが友達よりももっと深い関係だったらどうする?」 朝陽と俺との間に風が吹き抜ける。 あまりにも突然で言葉が出ない俺、右手をぎゅっと握りしめている朝陽はお互い目を合わせたままどちらもそらそうとしない。 『雅!どうしてこんなところに居るの?!』 大雨の中、家をじっと見つめている俺を見て、家から出てきた朝陽が俺の手をぐっと掴む。 そして、そのまま掴んだ手を引っ張り二人で家の中に入った。 『こんな雨の中、立ってたら風邪ひくよ?!』 雨で濡れて震える俺が着物の上に着ていた羽織を脱がせ手拭で頭や首元を拭いてくれる。 朝陽の姿は前回記憶を見たときに比べて、身長も高くなり、今では俺の背を超えていて現在の姿そのものだった。 『……ごめん。急に俺、お前に会いたくなったんだ。……最近、家のことが色々あって会えなかったから』 『僕も……会いたかったし、寂しかったよ』 朝陽はそう言いながら土間でうつむいている俺を居間へ通し、座らせ、お茶を出してくれる。 『ありがとう』、俺が言うと朝陽は微笑んで俺の背中を一定のペースでトントンと叩く。 『朝陽。ごめんな。急に来ちゃって。お母さんに迷惑だったろ?』 『ううん。お母さん、親戚の家に行って今いないからゆっくりしていって……って言いたいところなんだけど、雅、ここに来ていいの?』 朝陽が心配そうに俺の顔を覗き込む。 朝陽の顔、声色から俺のことを凄く心配している様子がうかがえた。 だけど、記憶の中の俺はそれを分かっていて気づいていないふりをしているのか何ごともないように話し出す。 『駄目だよ。毎日父上にこっぴどく朝陽には会いに行くなーって言われてる』 お茶を一口飲み、暖かい息をふーっと吐く。 少し落ち着いてきた俺に対して朝陽は動揺して目を大きく見開いている。 『だったら、どうして来ちゃったの?雅、また罰受けることになるんだよ?次はもう手紙も顔を見ることでさえ出来なくなるかもしれないんだよ?』 俺の肩を掴み、朝陽は左右に揺さぶった。朝陽の肩を掴む手がどんどん強くなっていき、顔を歪めると気づいたのか力が弱くなり、肩から手が離された。 『……お前は会いたくなかったのか?』 俺が拗ねたように聞くと朝陽は一瞬で『会いたかった』と答える。 『だったら、いいじゃん』 『でも!』 俺は顔を真っ青にしている朝陽を抱きしめて一緒に床に寝転ぶ。 『俺はお前が居れば、何にもいらないんだよ。今俺が持ってる地位も名声も全部。すべてを投げ出したってお前がいいんだよ』 『……そんなの殺し文句じゃん』 一緒に寝転がっていた朝陽が俺の上にまたがる。 朝陽の目は潤んでいると同時に欲が光っていた。

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