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ここまで姫宮のためにお祝いと称して、用意をしてくれたところなんてなかった。せめて、普段の食事が多少豪華になった程度だ。 というより、姫宮に用意してくれる食事は、自分らの子どものためであり、決して姫宮のためではない。 だから、姫宮に向けてなんて、夢を見ているんじゃないかと思うぐらい、ありえないこと。 そう思ってしまったから、「私になんか用意してくださらなくても」という言葉がつい出てしまったが、その唇に安野の人差し指が当てられた。 「自分を落とすようなことを言ってはなりませんよ。あなたは立派な方だと言いましたよね。それに、そのようなことばかり仰いましたら、お腹の子に影響が及びます。ですから、出来るだけ楽しいことを言いましょう」 「はい」 「ですが、たまには弱音を吐いてもよろしいんですからね。大事な時期で、余計に神経質になるでしょうし。私達も出来る限りサポート致します」 並んでいた四人は揃って頷く。 嫌味の一つや二つ言われることが多かったものだから、このように真正面から受け入れられることに慣れておらず、落ち着かない。 それでも、ほんの少しだけ、肩を寄せてもいいのだと思えてしまうのだから、不思議だ。 「ありがとうございます、皆さん」 小さくお礼を言うと、それぞれ言葉を返し、微笑みを見せてくれた。 また少しずつ、緊張の糸が解れていくのを感じた。 「さて、パーティを始めましょうか」 安野が言うと、テーブルに置かれていた薄ピンク色の液体が入ったグラスをそれぞれ持ち、そして、安野から渡される。 「イチゴのスムージーです。他にもありますから、飲めなさそうでしたら、無理をせず」と付け加えて。 「姫宮様のご懐妊のお祝いを称して」 グラスを掲げて言う安野に倣って、他の人達も同じように掲げる。 その様子を呆然と見ていた姫宮に、今野《いまの》が「姫宮様も上げてください」と耳打ちしてくる。 そう言われるがままにすると、安野達は言った。 「乾杯っ!!!!」

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