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膨れていても、まだ小さい命を見つめる眼差しは、鬱々とした気持ちは晴れていた。 悪いことを考えてしまうのは、つわりのせいだろう。そう思うことにして気持ちを切り替えた姫宮は、サイドチェストに置いていた絵本を手に取った。 こないだの散歩の途中で立ち寄った本屋にて、自分が選んだ物だ。 「姫宮様、お好きなのですね」と意外だと言う安野に、「⋯⋯ええ」と曖昧な返事をした。 この作品を選ぶのはおかしかっただろうかと思いながら、読み聞かせをしてあげた。 「──⋯⋯人魚姫は泡となり、消えていきました」 しんみりとした口調で締めくくると、次の絵本を手に取り、読み始めた。 そうして、物語を半分ほど読んだぐらいだろうか、規則正しいノックする音が聞こえ、言葉が途絶えた。 「姫宮様、入ってもよろしいでしょうか」 安野の声だ。 「はい」と短く返事すると、安野が入ってきた。 が、いつものシンプルな服装にエプロンを付けた格好ではなく、茶色の全身タイツに腹部は薄黄色の楕円の模様に(へそ)辺りに、バッテンが書かれていた。 それに彼女だけではなく、今野、上山、江藤、小口と皆揃って入ってきたのだ。 ちなみに、今野も黄色の全身タイツを着ていた。 それにしても、皆して来てどうしたのかと、さすがの姫宮も呆然としていた。 「突然、皆揃って来てしまい、失礼します。姫宮様がちょうど絵本を読まれているので、今やるのもどうかと思いますが、私達も御月堂様のお子さんを楽しませようと思いまして、ささやかながら劇をしたく、馳せ参じました」 こちらに一礼する際、頭に付いた丸い耳が垂れて、可愛らしく思えた。 「姫宮様、『タヌキとキツネの化かし合い』という話をご存知ですか」 「いえ、初めて聞いたかと」 「左様でございますか。でしたら、ちょうど良かったです。より楽しめるかと思います。では、ご覧ください」

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