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31.
両手を上げて、大袈裟に喜んでいたキツネの今井は、油揚げを手に取ろうとした、その時。
「残念でした! 油揚げに化けたタヌキさんですよ〜!」
「くぅーっ! これはやられましたね!」
地団駄踏んでいるキツネの今井に、タヌキの安野は得意げな顔を見せる。
油揚げとタヌキの安野がその場に消え、キツネの今井だけという場面に切り替わる。
「こないだのお返し、どうしてやりましょうか⋯⋯。タヌキさんが食べ物でやったというのなら、こちらも好物で勝負したいところですね⋯⋯」
考える仕草をし、行ったり来たりを何度かしていると、「そうだ!」と声を上げた。
「アレに化けましょう」
そうして、タヌキの時と同じく、「どろんっ!」と言うと、キツネの今井がいた場所に食べ物が置かれたが、目を丸くする。
なんとそこにあったのは、緑色のパッケージの天ぷらそばだった。
姫宮もたまに食する見慣れたカップ麺の匂いにつられてきた様子のタヌキの安野が、「まあまあ、こんなところに大好物があるだなんて!」と、飛び上がらんばかりに喜んだが、やはり、手に取ろうとした時、キツネが現れた。
「まんまと騙されましたね」
「私の大好物をよくご存知でしたね」
そう言いながら手に取る安野に対し、黒子達が小さく笑い出したり、「⋯⋯タヌキって、天そば好物なの⋯⋯?」や「⋯⋯いや、あれは安野さんの大好物⋯⋯っ」と言っているそばで、安野が見せつけるように啜っていたことで、限界だと言わんばかりに声を上げて、笑い合っていた。
タヌキであるから、洒落のつもりでそばに化けたていで置いたのかと思ったら、ただ単に安野の好物であるから、そうしたまでのこと。
それって、なんだか──。
「姫宮様、笑っていらっしゃる?」
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