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そのようなことを自分から言ってきたのは初めてだ。内心驚いていた。 姫宮にしては、積極的に話しかけたものだから、自身の子にそうしようという気になったのか。 安野がアドバイスをしてくれたおかげだ。 「やはり、嫌か」 その問いかけは、初めて話しかけた時、姫宮がわけも分からず泣いてしまったことを言っているのだろう。 もうあんな失態は犯さない。 「いえいえ、そんなことはありません」 「ならばいい」 すると御月堂は立ち上がり、こちらにやってきたかと思うと、スーツであるのにも関わらず、両膝を着いた。 姫宮が想像する以上の代物なのではと、無意味な心配をしている最中、あの時のようにそっと触れた。 この方は、"あの人"とよく似ている。けれども、少しだけ違うところを見つけた時、あの時とは違って、頭を過ぎることなく、ゆっくりとした動作で撫でる彼に意識を向けることが出来た。 「今日も天気がいいな。暑さも和らいできた。散歩をするのにはちょうどいい。普段は、車で移動することが多い。だから、天気やら気温やらさほど気にしたことがなかった。自然があることもな。お前はそれを感じているのか」 淡々と、だが、微量ながらも向ける眼差しが、慈しみがあるように見え、凝視することとなった。 "あの人"とは違うところ。"あの人"は自身の子に、このような目を向けたことがあっただろうか。 「⋯⋯と、こんな感じでいいのか⋯⋯?」 御月堂が目線を上げた時、我に返った姫宮は、「ええ、大丈夫です」と言った。 その時、ポコン、と蹴ってきた。 御月堂が僅かに目を見開いたかのように見えた。 「⋯⋯蹴って、きたな」 「蹴りましたね」 「すごいな。ちゃんとこの中で育っているんだな」 「ええ、育っております」 言葉からは感情は伝わってこない。だが、初めて感じることに酷く驚いているように見えたものだから、肩を震わせた。

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