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第1話

なんてことはない日常。そう、なんて事はない日常だったのだ。 朝起きて、学校に行く支度をして、眠いなんて言いながら母親の作ったご飯を食べて、そして思春期真っ只中の妹にちょっと舌打ちをされて玄関を開ける。 いつもの通学路をいいかげん買い替えようかと悩むほどに吐き潰したスニーカーで歩いて、大きな欠伸をした頃に後ろからまあまあ強い力で背中を叩かれて、そこでようやく目が覚める。 保育園の頃から一緒のやつに軽く挨拶をして二人で並んで学校にいく。とてもとてもいつも通りの日常だった。 ついたら靴を履き替える。そして教室に行く。男子校なのにどこからか黄色い悲鳴が聞こえる。声帯どうなってんだと思うのは何度目だろうか。 そこいらの芸能人やモデルもビックリなほどのイケメンや男前プラス金持ちが集う普通の男子校。いや多分ここは普通じゃない。でも普通なんです、ある一定のグループは。 キラキラしている集団から何歩も離れたところを通行人Aよろしく歩き去り、自分の教室の自分の席に座ろうとしたがやはりそこには先客がいた。 これもなんてことはないいつもの日常である。またかとため息を吐いてしょうがなく教室から出ていく。向かう先の候補は3つ。 1、保健室。2、社会科準備室という名の空き教室。3、屋上。 第一候補の保健室の扉を開けようと手を伸ばしてピタリと止まる。そっと扉に耳をあてて、聞こえてきたちょっと筆舌には尽くしがたい音にその場から走り出す。これも日常だ。三日に一回はある。多すぎないか。こうなったら第二候補だと足を向けるが前方からやけにキラキラしている野郎が来ているのに気がついて足を止めた。 そしてすぐに方向転換をして屋上を目指す。それはもう全速力で。 足には自信がある。あのキラキラしい奴らすら追いつけないほどの脚力を持つ俺なら前方にいたキラキラの中でもトップオブキラキラを誇るやつからだって逃げられる。この逃走も日常だ。 俺はとにかくキラキラしているものが苦手だった。何あの顔、顔に何塗ってんの後ろから女優ライト当ててんのなんでそんな光の粒子舞ってんの。そして何より、 「なんで男が男にチヤホヤされてドヤ顔してんのーーー!?」  第三候補の屋上にて、俺は叫んだ。

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