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第49話

背中に伝わる熱。 両腕は固く収められて、動かすことができない。 後頭部にかけられる小さな息と低い声に、 龍司は横隔膜を震わせた。 また、この展開だ。 先週から毎晩のように見る同じ夢。 名前を呼ばれ、後ろから抱き寄せられる。 夢であることが信じられないような温もりを背中に感じ、妙に生々しい。 そして振り返ると必ずこの言葉から、会話が始められる。 「リュウジ…あいたい」 「俺は…俺は会いたくない」 「あいたい」 龍司の言葉が聞こえていないのか、 振り返った龍司の身体を長い両腕で抱き寄せる。 ”男”の、長い両腕だ。 「やめろ…やめろよ、お前…お前…男……」 「ごめん。リュウジ、ごめん」 ごめん。 男はいつもこうして龍司に謝る。 申し訳なさそうに項垂れ、 龍司の耳に頬を寄せる。 何に謝られているのか、心当たりがない。 「俺に、何をしたんだよ…お前、誰なんだ…」 「連れて帰ってやれなくて、ごめん。ごめん」 会話がまるで噛み合わない。 聞きたいことが聞けないもどかしさに苛立ちを感じながら、龍司は男の胸板を掌で押し戻そうとした。 嫌な予感がした。 会話を遮ると待っている展開を、 今日こそは取り払ってしまいたかったのに。 「リュウジ…」 名前を呼ばれると、途端に身体の自由がきかなくなる。 男は龍司の着ている紺色のセーターの下から ゆっくりと手を忍ばせた。 「やめ…!やめろ…やめろって…」 男の手は龍司の胸元まで滑り込み、指で先端をなぞった。 その刺激に龍司の背中がびくりと震える。

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