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第54話
サクラを家に連れ帰って、
まもなく一年が経とうとしている。
サクラは連れ帰った頃からあまり体格の変わらなかったが、
元気に毎日を過ごしていた。
この生活にもすっかり慣れたというのに、
1ヶ月前から何かがおかしい。
あの夢。
あの男。
触れられる、あの感覚。
龍司はふとその感覚を思い出し、
身体を震わせた。
欲求不満で片付けるには、
不可解なことが多すぎる。
「…寂しすぎて、誰が相手でも良くなっちゃったのかな」
龍司はリビングのサクラを胸に抱きながらソファに座り、天井を仰ぎ見た。
夢に出るあの男は、いったい誰なんだろう。
あれが、サクラを捨てた男だったとしたらどうだろう。
男は龍司を探していると言っていた。
何のために?
サクラを迎えに来たのか?
「…今日夢に男が出て来たら、今度こそ聞いてみよう。」
サクラの体温を感じながら、
龍司は静かに目を閉じた。
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