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第74話

思い出した。 珍しく遅い時間に連絡をよこすこと自体、 何かが違っていた。 そして、"あの出来事"が、あった。 鼓動が、急に早くなる。 龍司は視線を泳がせながら、 ソファに立てかけていた クッションを胸に抱き寄せた。 「………孝之」 孝之の背中が、ぴくりと動いた。 "タカユキ" あの声、あの、響き。 孝之の鼓動も、高まっていく。 視線を床に落とし、手汗で濡れる拳を 膝の上で握り締めた。 しばしの、沈黙が流れる。 「………"タカユキ"………」 孝之の額から流れた汗が、 握り締めた拳の上にぽたりと落ちた。 ゆっくりと顔を上げると、 龍司はソファの上でクッションに顔を埋めていた。 「龍司………」 "リュウジ" あの声、あの、響き。 夢でもなく、 幻でもなく、 それは現実だった。 「夢………」 最初に口を開いたのは龍司だった。 クッションに埋めた口元から聞こえる言葉は、 少しくぐもって、聞き取りづらい。 「…夢…見てるって、言ってただろ…サクラの」

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