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第73話
「…とりあえず、命に関わることじゃないみたいで、良かったな」
「…うん」
病院を後にした2人は、
龍司の家に戻った。
リビングのソファに腰掛けると、
身体の力が一気に抜けた。
サクラの熱は一時的なもののようで、
安静にするように医者に言われた。
仕事と"例の夢"のことで振り回されていた自分の感情を、
敏感に感じ取ったのかもしれない。
接してやれなかったことが、
サクラにストレスをかけることになってしまったのかもしれない。
後悔ばかりが、心に重くのしかかる。
「このところ、サクラにちゃんと構ってやれてなかったから…変化にも気づけなかった」
「龍司…」
「サクラがいなくなったら……耐えられない」
龍司は大きく溜息を吐くと、
ソファの背もたれに身体を預け
両手で顔を覆った。
しばしの沈黙が流れた後、
孝之はソファから勢いよく立ち上がった。
弾みでソファが大きく揺れ、
龍司が顔から手を離す。
視線を上げると、目の前で孝之が正座をしていた。
「何…」
「………こないだは…すいませんでした。その…サクラのこととは…関係ないけど」
頭を深々と下げる孝之に、
龍司は小さく溜息を吐いた。
「いつもはあんなことにはならないんだ。久々に会った奴と飲んだらつい、話が盛り上がって…それで…」
龍司はまた一つ、小さな溜息をついた。
「…心配したんだ。玄関開けたら、うつ伏せで倒れててたんたぞ。何かあったんじゃないかって…」
「…ごめん」
「…ったく、どうせどこかの女の家と間違えでもしたんだろ」
「いや…俺、お前の所に言って良いかって、メールしただろ」
「………え………?」
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