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お願い、僕をいじめて ⑩
「ふぁっ……おしり、溶けちゃう。胸、なくなっちゃ……」
数日ぶりの愛撫は身体の芯まで蕩けそうだった。
カフスを着けてもらってからずっと、光也の唇は胸から離れない。乳暈ごと口内に含まれて、熱い舌で転がされている。後孔にはたっぷりのローションを纏った指が三本挿入されていて、内壁を蠢いている。
腰骨まで蕩けてしまいそうだ。喘いでしまうのを止められないほどの悦楽に、千尋は折った膝を震わせ、足の指をぎゅっと折り曲げた。
「こーら。締めつけたら指が苦しいよ? 中を広げなくちゃならないんだから、リラックスして」
リラックスなんてできないとわかっているくせに、光也が言ってくる。
挿入するその日まで、自分に抑制剤を使うと言った光也は、パジャマの上を脱ぎもしてない。多少息が上がっている様子はあるが、表情も声も穏やかさを失っていなかった。
「ず、るい……みっくん、今日、抑制剤、二本打った、でしょ、ぁ、ああん!」
喘ぎながらも光也を憎らしく睨むと、口角をわずかに上げた。そして、先走りを垂らした千尋の熱芯の先を、くるくると回し撫でし始めた。
「は……ぁ、ぅ……も、っと」
もっと強く握って、激しく扱いてほしいのに、光也の手は子猫の頭を撫でるかのようだ。焦れったくてたまらない。
「ずるい、かぁ。でも、理性を保てないとこうやって可愛がってあげられないでしょ? ずっとほぐすだけだったから、今夜はたくさん触ってあげたいんだけどなぁ」
わざと悲しそうに言ってきて、両方の手を千尋の身体からパッと離した。
熱芯は侘びしくピクピクと震え、後孔からはローションと千尋の愛蜜が混ざったものが滴り会陰を濡らす。
「やぁ。やだぁ……! みっくん、やめないで」
唐突に空洞になった淫路の切なさに、千尋は涙を滲ませ、子どもがいやいやをするように頭を振った。
光也に愛されるようになってから随分甘えん坊になった自覚はあるが、こんなに甘えた声を出してしまうなんて、以前までの自分では考えられない。
「じゃあ、おねだりしてごらん」
光也の声も、日を重ねるごとに、肌を重ねるごとに甘くなっている。
頬から耳を通ってうなじを撫でる手も、甘くて甘くて蕩けそうだ。
「ん……」
千尋はその手にすり寄った。
専務執務室に異動になった日、光也は猫が好きなのだと成沢が言っていた。子供のようじゃなく、猫のように甘えれば、光也は満足してくれるだろうか。
千尋は重い鎖を両手で引き、身体を起こした。カフスチェーンで繋がれた手は、胸の前で自然に猫の手のように丸まっている。
顎を突き出して赤い舌を出し、濡れた光也の指を舐める。ちろちろと舌を動かし、潤んだ目で光也を見上げれば、頬の血色が濃くなっているのが窺えた。
眇められた目と、きゅっと引き結んだ形の良い唇も、光也の色欲が増していることを教えてくれる。
千尋は胸を高鳴らせて上体をかがめ、顔を下へとずらした。
肘をベッドについて体を支え、尻を高く上げた姿勢で一番ほしいそれに口づける。
パジャマの下で屹立するそれは、パジャマの上からでもどれだけ勇壮かを知らしめていた。
布越しに握り、水音を立てて先を吸う。雄のフェロモンを感じさせる風味が鼻腔と口内に充満し、千尋の身体はさらに熱くなっていく。
千尋はハンドカフスに自由を奪われた手で、光也のパジャマの下履きに手をかけた。上手く下ろせなくて一生懸命になっていると、光也が手伝ってくれる。
勢いを付けて飛び出してきた光也のソレは、二本の抑制剤の影響か、先日採精室で目にしたものよりは猛っていなかった。それでも熱くて長大で、露頭は先走りで濡れててらてらと光っていた。
千尋の口内に、自然に唾液がたまってくる。
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