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お願い、僕をいじめて ⑨

  (ふち)とバンド部分は黒く、カフスの内側にはふわふわしたファーがあしらわれている。 「買ってくれたの!?  ……あれ?」  チェーンの音をジャラリ、と鳴らしながら箱から取り出すと、底にもうひとつ、透明のパッケージに入った同じ見た目の小さなカフスを見つけた。  そのカフスは幅一センチ、直径五センチくらいの輪っかで、これも締まりを調節できるようになっているから、直径はもっと小さくなりそうだ。明らかに手首や足首用ではなく、もちろん首に着けるものではない。 「これって」  もしかして、と光也を見ると、今にも吹き出しそうに楽しげでいて、瞳には嗜虐的な色も滲ませている。 「俺がつけてあげるね」  ふふ、と笑って小さな枷をパッケージから取り出すと、光也は千尋のパジャマの下履きと下着に手をかけた。   「……あっ!」  いったん反応を止めていたペニスをすぐに手に包まれ、軽く引っ張られる。  あっという間に根本にカフスを巻きつけられた。  情けなくも、千尋のペニスはそうされたことでみるみるうちに昂っていく。 「んっ、みっ、くん……」 「これ、コックリングっていうんだってね。これで射精管理をしてあげるからね」  コックリングごと熱芯を包まれた。光也の筋張った手の感触をいつもより鮮明に感じる。   「や、あぁ……」 「これを着けてると、千尋のがいつもより赤くて、ちょっと大きく見えるよ」  卑猥な言葉さえ腹の中を疼かせる。だが、コックリングで血流が抑止されるためだろうか。熱芯へのせり上がりはそう強くはない。 (でも、でもこれ、逆にお腹の中が熱いよ)  逃すことのできな疼きが切ない。千尋は内太ももをぎゅっと寄せて、その切なさに耐えた。   「身体、ビクビクしてるね。辛いけど、これ、してあげるから、頑張ろうね」  光也は千尋の身体を横向きにし、千尋の耳たぶやうなじに口づけを降らせてくれる。「好きだよ」「愛してる」何度もそう繰り返し、ハンドカフスを手に取ると、手首にかけてくれた。 「あ……」  内側のファーの肌触りがいいカフスに、両手の自由を少しだけ奪われる。 「明日は休みだから、今日は寝かさないよ?  覚悟してね」  そう言いながら、光也は手と手を繋ぐカフスチェーンの真ん中に、さらに一本、長いチェーンを付け加えた。ジャラリと鈍い音がして、このチェーンがおもちゃのプラスチックやアルミニウムでなく、ステンレスの鎖であることがわかる。 「さあ、千尋」  身体を仰向けに戻され、ベッドに沈められる。光也がチェーンを引っ張ると、千尋はカフスごと腕を挙げる姿勢になった。チェーンの先はどこにも結ばれることなく、手の先にまとめられる。  きつくはなく、厳密な拘束ではない。だが、チェーンの重みがあるからごく簡単に手を動かすこともできず、「囚われている」と感じさせてくれる。  (みっくんに、囚われてる)  そう。まるで。  優しく包み込むようなローズレッドの手枷は、常に千尋の味方であろうとする光也の愛情のよう。  身体の自由を強奪しないが、重みのあるステンレスのチェーンは、千尋の心を決して逃さない甘い鎖。のよう。 (僕に絡みつく、新しい鎖だ)  大好きな人の愛でがんじがらめにされて、自分も光也とってそうありたい、と思いながら、光也の引き締まった腰に細い脚を絡みつけた。

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