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お願い、僕をいじめて ⑧

「……で、連絡先を教えてもらえなかったんだよね。やっぱり僕がオメガだから懇意になれないのかな?」  夜、光也の部屋のキングベッドに座り、光也が横に座るのを待ちながら、首をひねって言った。 「それは違うけど……でも、俺は千尋が連絡先交換をしなくて安心したな」 「?? どうして? みっくん、僕に友達ができないのを安心するとか酷くない?」 「千尋は鈍感だね。俺も苦労するよ」  隣に座った光也にうなじを噛まれ、肩が揺れる。 「……っつ。どう、いう意味?」 「千尋、俺のこれ、つけるようになってからまだ間もないのに、前より色っぽくなってるの、知ってる?」  フェロモンのスプレーボトルを掲げて見せられる。 「し、知らないよ……ん、あっ……」  じゅっと音を立ててうなじを強く吸いながら、光也は同時にボトルノズルをワンプッシュする。ほんのりとだが、クチナシに似た甘い香りが鼻腔に絡んだ。 「このふたつで、千尋のフェロモンの濃度と持続時間が上がってるんだろうね。千尋のオメガらしい美しさに磨きがかかってる。ほら」  ベッドの中央に身体を移され、光也の足の間に挟まれる。パジャマの上を脱がされれば、下着はつけていないからすぐに肌があらわになった。 「ここも、ここも、前よりずっとつやつやしてる」  大きな手のひらが二の腕や腹を滑る。羽根で触れるような官能的な手の動きは、千尋の声を甘くさせる。 「ここも……凄く綺麗なピンクだよ」 「ぁんっ」  胸の小さな蕾を指でつままれる。反対側は中指の腹で押されて、千尋はむずむずと身体をよじった。 「千尋、かわいい。先がぷっくりしてきたよ」  すりすりと先端をこすられ、ときに弾かれる。千尋が身体を震わせると、蕾の周りを回し撫で、また蕾をつままれた。 「や、ぁ、あ……ぁ」  ここ最近は射精しないように後孔を解されるだけの日々だった。それでもたくさん声を出してしまうのだが、ペニスが芯を持つ前に動きを止められ、また解されて、の繰り返しで、肌や胸に触れてもらうのが久しぶりだからか、千尋のペニスはすでに熱を持った芯となっている。 「みっくん、どうしよう。久しぶりだからすぐに出ちゃいそう」 「胸を触られただけでイっちゃうの? 痛くもしてないのに、えっちだね」  甘く低い声を耳の中に直接入れられる。それだけで熱芯の先からじわりと露が滲んだ。 「だってぇ」  そこがどうしてもどうしても切ない。千尋は手を伸ばして自分で慰めようとした。 「駄目だよ、千尋、触っちゃ駄目」  光也の手に阻まれる。強い力で腕を取られ、その力の強さが気持ちよくもあるが、熱芯の疼きが辛すぎて、手を動かそうともがいた。 「やだ、触りたいぃ」  光也の腹に腰をすりつけると、光也は取り上げた千尋の手にちゅ、ちゅ、と口づけをして「待ってて」と言った。  光也はいったん千尋から離れ、ベッドサイドワゴンにあった箱を手に取る。六十サイズくらいの箱は、白地にピンクのリボンでハートマークが描かれている。 「千尋、プレゼントだよ」 「え? ……わ……!」  箱が開かれた途端、目が輝いた。  中にあったのは、ピンクゴールドのチェーンがついた、ローズレッドの革の手枷(ハンドカフス)だった。

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