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専務、溺愛ハラスメントはおやめください ⑤

「ふぁっ、みっくん、は、ぁあん!」 「あいつにどこを触られた? ここは? こっちは?」  あのあとすぐ、横抱きにされて光也の部屋のキングベッドの中央に沈められた千尋は、一糸まとわぬ姿で光也に全身を(ねぶ)られていた。 「そこ、だけ、そこだけだからぁぁ」  大きな手で尻を揉みしだかれ、蜜が溢れた後孔を吸われる。腰から下が溶けてなくなる感覚に身もだえながら、光也の名を呼んだ。 「みっくん、みっくん、そばに来て」 「いるよ、ここにいる」 「違う、顔、見たい。キス、して……」  部屋に入ってからうつ伏せにされ、点検されるように体中をまさぐられていて、まだ一度も唇を重ねていない。 「……ごめん、我を忘れて……千尋、俺はここにいるからね」  光也が体を起こしてくれ、しっかりと腕の中に包んでくれる。  涙を滲ませた目尻に柔らかい唇が降りた。触れたそばからぬくもりが広がり、千尋は官能とは別の甘さと切なさを味わった。 「会いたかった。ずっと、こうしてほしかった」 「ああ、俺もだよ。千尋……もっと……しても、いい?」  光也は額に玉の汗を浮かべ、苦し気に息を切らしていた。常務との決着の最中、千尋の大量のフェロモンに当てられながらも、ずっと耐え忍んでいたのだろう。  フェロモンの香りがどこよりも強い千尋のうなじに唇を運ぶと、べろり、べろりと何度も舐め上げる。  千尋は身体をぞく、と震わせた。うなじは熱を持って紅潮し、フェロモンの香りがいっそう濃く立ち昇る。 「して。みっくん、して……」  光也の言う「もっと」の意味はわかっている。そしてその準備は心だけではなく、身体の見えない内側も万全になっていることを、フェロモンが教えてくれている。 「みっくんの、番にして」 「千尋、俺のたった一人の番……」  引き寄せられるように唇を重ねた。唇を()み合い、舌根が痛くなるほど吸いつき合う。 「愛してるよ。一生かけて千尋を愛し抜くから」 「僕もみっくんを愛し続ける」  そこからは、言葉は必要なかった。  スプリングのきいたベッドに揉み合うように倒れて重なり、全身で互いを求め合う。触れる部分すべてが熱く、身体のすべてが快楽の受け口になっていく。 「あつぅい、あついよ……ぁああ!」  千尋の腹の奥で、情欲という名の蜜が煮えたぎった。オメガの本能が運命のアルファを中に抱きこもうと、胎内をじゅくじゅくと煮溶かしている。 「千尋、どんどん濡れてくる……指が溶けそうだ」 「あ、ぁ……らって、好きらから。みっくんと、ひとつになりた、からぁ……」  ろれつが回らないのがもどかしくて、首にすがりついた。  力を入れた反動で後孔が大きくひくつき、中がうねって腹の表面が波打つ。  今すぐ入ってきてほしい。愛する人の熱で満たされ、愛する人の遺伝子を自分の中に抱きしめたい。 「千尋、このまま顔を見ながらしたい。目、開けて?」  閉じている瞼に口づけを受ける。薄眼を開けると、そう言った光也がきつく瞼を閉じ、眉を歪ませていた。  おそらく光也が理性を保っていられるのもあと少しなのだろう。じきに自分が野獣(ラット)化し、千尋が泣き叫んでも逃げようとしても、交接をやめないことを感じとっていて、そうなる前に顔を見たいと思ってくれたのだろう。 「ねぇ、みっくん。もし僕が先に落ちてしまっても、最後まで、みっくんが全部出すまで、して……ね?」  次は千尋が光也の瞼にキスをする。  光也は筋肉が盛り上がった肩を大きく上下しながら、ゆっくりと瞼を開き、琥珀色の瞳を見せてうなずいた。 「ああ、先に謝っておくよ。朝目覚めたら、酷くした分優しくするから」  どちらもが潤んだ瞳をしっかりと絡ませ、深く口づける。  それからすぐ、光也は千尋の細腰をかかえて尻を上げると、もう一方の手で恐ろしく怒張した赤黒の熱塊を握った。 「優しくしなくていい。酷くして。僕が、常にみっくんの存在を感じていられるように」  腰を支えるたくましい腕に手を添え、光也を誘う。

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