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番外編Ⅱの① お願い、僕をいじめて⑫と混迷と昏迷のあいだで①の間の話

こちらのお話は「お願い、僕をいじめて⑫と混迷と昏迷のあいだで①」の間のお話です。 ******* 「や……みっくん、もうだめ、許して……!」 「許すなんて、俺は意地悪をしているわけじゃないだろう? これはいつも頑張っている千尋へのご褒美だよ?」  後孔の拡張が始まって一か月が近づいた夜。  千尋はいつものように両手をハンドカフスで、ペニスをコックリングで拘束されていた。  いつもと違うのは、雫が落ちるほどたっぷりと濡れたガーゼをペニスの先にかぶせられていること。  ガーゼには光也のフェロモンローションがたっぷりと染み込んでいる。  胸もだが、ペニスも先端が弱い千尋は、涙と涎とで顔をグシャグシャにしながら、今までに感じたことがない悦楽に腰を揺らして喘いでいた。 「あっ……! ペチペチってしないでっ。んんんっ、無理、もぉ 無理いっ!」 「まだ始まったばかりだよ? もっと気持ちよくなれるからね」  かぶせたガーゼを取ったり外したりされ、敏感な亀頭を刺激される。  光也は慈愛たっぷりの瞳をなだらかな弧の形にしているのに、どこか嗜虐的だ。  正直言ってかっこいい。氷の王子感が漂っている。  だが、甘い疼きと、吐精感はあるのに吐けない苦しさとで、光也のかっこよさに酔っていられない。  このままじゃおかしくなりそうだ。 「んぁあぁぁぁ!」  どうして……どうしてこんなことになっているんだっけ……。  ことの起こりは一週間前の土曜日。  夕方、千尋のスマートフォンにニ通のメールが届いた。 「あ……モトさん、お店辞めるんだ」  差出人は「CLUBマゾ」のサドキャスト・モト。  同じオメガのキャストだったので、千尋は毎回モトを指名していた。 ‘’長年お世話になりました。このたび引退を決意しました。十二月三十日が最後のお仕置き日になります。リピーター様もお久しぶりの方も、モトとの最後のプレイを思い出に刻みにいらしてください’’  一通目のメールは会員すべてに送られている自動メール。そしてもう一通は。 ‘’藤村さん、しばらくご来店がありませんが、心境の変化などございましたでしょうか。充実した毎日を送っておられますように。長きに渡るご利用、ありがとうございました’’  モトからの直接メールだった。  モトはSMクラブのサドキャストらしからず、利用後のお礼メールや次回のお誘いメール、季節の挨拶メールなどを欠かさない、こまめなキャストだった。  また、プレイ後のケアだけでなく客のメンタルケアにも定評があり、千尋に関しては、光也以外に千尋の過去を知る人物でもある。 「最後か……素顔も知らないし、もう会えないんだな……」  光也と暮らして以降はもう行くつもりもなかったが、世話になったキャストだ。  発情期のない身体の辛さと、今なら異常だったとはっきりと自覚できる過去を理解してくれた。  光也と会う前の、ひとりぼっちの千尋の生活に小さな彩りを与えてくれた。   引退だと知ってしまうと、店に出向いて礼と花束を届けたいと思ってしまう。 「でも、みっくんに黙って行ける気はしない」  同じ家で暮らし、仕事からの戻りは別でも大抵は夕食を共にし、よほどのことがなければ光也のベッドで共に眠る。  休日ともなればトイレくらいしか離れている時間がない。 「千尋、お風呂の準備ができたからおいで」  土曜日の今日も、一緒に入浴する。番になるためにふたりで頑張ろうと決めてから、よりふたりの密接度は高まった。 「あのね、みっくん。ん、そこっ……」 「どうしたの? ただ洗ってるだけだよ?」 「意地悪ぅ……。触るなら先のとこ、もう少し強くしてほしい」 「だから、洗ってるだけなのに」  嘘だ。光也がギリシャから直接取り寄せている、最高級の百%オイルソープをたっぷりと泡立て、一番感じるところをだけを避けて身体を撫で洗いしてくるくせに。 「ぅ、んんっ」  濃密な泡が胸の先とペニスの先をかすめるだけで、甘い痺れが背筋を駆け上がる。  千尋は焦らされることにとても弱い。光也は千尋以上にそれをわかっているはずだ。 「……あっ……!」  くるくる、きゅうぅ。  乳暈を回し撫でられ、先を潰すように引っ張られる。  求めていた刺激を与えられ、千尋は顎を上げて爪先立ちをした。

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