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番外編Ⅱの②

 大理石の濡れた床では身体が不安定になるが、たくましい肢体がしっかりと支えてくれる。  その後は決まって全身余すところなく洗われて、お姫様抱っこでバスタブに沈められ、のぼせるまでキスをして、バスローブに包まれたらベッドで後孔の拡張……なのだが、いけない、このままでは話したかったことを忘れてしまう。 「みっくん!」  バスローブをかけてくれた手を握った。 「ん?」 「あの、あのねっ、CLUBマゾに行ってきたいんだけど!」  瞬間で、光也の形の良い眉が歪む。 「どういうこと……?」  まずい。単刀直入すぎて誤解を生んでいる。これはしっかりとプレゼンテーションをしなければ。  千尋は正座になり、敬語になって説明をした。 ◇◇◇ 「君、まさかそんな説明で私を納得させられるとは思っていないでしょうね?」  専務は琥珀色の美しい目を細め、蔑むように秘書を見た。 「専務、どうかもう一度お聞きください、私は真剣に……あっ」 「真剣に? 真剣にお仕置きを受けに行こうとお考えなのですか?」  専務椅子から立ち上がった専務に、顎クイをされる。力が入っていて少し痛い。 「お仕置きだなんて……! 私はただ先方にご挨拶に伺おうと思っているだけです」 「疑わしいですね。君はどうしようもない変態ですから、そう言いながらも最後のお仕置きを期待しているのでは?」 「そっ、そんなはずありません! 私がお仕置きしていただきたいのもご奉仕したいのも、専務だけです!」  ああ、言ってしまった。今まで秘密にしておいたのに……。  秘書は顔をそらして目をぎゅっと瞑った。どんなに不快に思われるだろうか。 「ふ。君にしてはまともなことを言うじゃないですか、よろしい、確かめてあげましょう」  だが専務は愉しそうな声を出し、秘書の顔を真正面に戻した。 「ん、あっ……」  口の中に指を突っ込まれる。 「ん、んぐっ」 「おいしそうにしゃぶってみなさい。そのあとは……わかっていますね。ハイアルファの私が満足できるよう、ここをご奉仕するんですよ?」  専務の手が、オーダースーツのスラックスの股間に降りた──── ◇◇◇ (なあんてね、こういうシチュエーションも憧れるなあ。みっくんって、僕が口でするのも遠慮するんだもん。おっきくて熱いやつ、僕だってモグモグしたいのにな……) 「千尋?」 「は、はい!」  プレゼンテーションの途中で光也の股間に目を下ろしてぼんやりしてしまった。  だって、あんまり見せてもくれないし、というか、毎度見る間もなくイかされてしまうので。 「その人が辞めてしまうから挨拶に行きたいのであって、プレイをしにいくわけではないんだね?」 「あ、うん、うん。そうなの。あちらの素性は知らないけど、就職してからずっと心の拠り所だったから」 「ものすご~~く妬ける発言だけど、俺がそばにいられない間、千尋の心を守ってくれた人だし……俺の千尋の可愛いところに何度も触れた人だよね? これは、俺もご挨拶しないとね」  ひゅうぅぅぅぅ~。 (あれっ? 浴室冷房入っていたっけ。急に冷感が。いや、それより) 「みっくんも行くの!?」 「ああ、そうだよ。来週の日曜日、予約しておいて。挨拶だけなら、時間は30分あれば充分だよね?」 (うわ。いつもかっこいいけど、張り付いたように笑うのもとってもカッコいい。たまに役員さんにこんな表情を向けるけど、僕にはないもんな……)  ウットリと見つめてしまう千尋だった。  

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