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はじまり

徒花は地獄と踊る かつて世界には二柱の神が居たという。 障りを浄化する癒しの神と、世界を創り出した創造神。彼らは互いを番とし、愛し合い、神聖なる場所で過ごしていた。神の国に繋がる門を閉ざしながらも、その場所から常に人々を見守り、世界の均衡を保っていたが、とある事件がきっかけでそれは崩れ去ってしまった。 今や創造神はウラミガミと呼ばれ、世界を壊す破壊神となり、発展した世界はたった一夜で過去の物となった。海面上昇の影響で失われた広大な土地は、僅かばかり残された地面を割り、青々としていた木々は花咲くことも無く死に絶えている。 生命を宿す浄化の神が失われ、世界は障りに犯された。障りは生き物を狂わせる。それらを人は魔物と呼び、残された人間たちは自らもいつか魔物になる恐怖と戦いながら、四つの村に流れ着いた。ウラミガミは長きに渡り多くの触りを生み出し続けたが、百年余経って人々が差し出した供物に漸く気を惹かれたのか、怒りを抑えたそれは人類にとある約束を持ちかけた。 それは、人口の約九割が男となり、絶滅の危機に瀕していた人間たちにとっては願ってもない褒美となった。 神は孕み子と呼ばれる子宮を宿した男児を与えた。性別の均衡を保つ浄化の神が居ない今、例え元創造神であっても、そのバランスを戻すことは出来ない。ましてや、世界を壊していた神の番を奪ったのは元々人間であった人神なのである。故に神はまた産みなおされた番を奪われては行けないと罪深き種族が増えすぎないように調整したのである。 孕み子が生まれるのは僅かひと握り。さらにその中から、孕み胎と呼ばれる神の子を宿す器を差し出すように命じた。 神は何度も自らで番を産み直すことを試みていたが、それらは魂を宿せず、自らの障りに犯されて消滅してしまう。悩んでいた時、人々に捧げられた供物の姿形が番とよく似ていたことから、その魂が今人間に引き継がれているから、生み出したそれらが魂を宿せないのだと気が付いたのだ。事実、どこを探しても何を生み出しても、番の魂は感じ取れなかった。人の中にあるのであれば、その人間に産みなおしてもらうことで魂を返してもらえばいい。無理に引き剥がすよりも簡単に母親から子に引き継がせるのが安全なのだから。 しかしながら、供物との間に生まれた子も、供物自身も、魂が不在であった。番の顔をした供物を神は大事にしていたが、やがてその供物も障りに触れ、怪物となってしまう。今は成れの果てとなったそれを神は大事そうに守りながら、番の魂を宿した人間を探し、その素質あるものを孕み胎とし、神の力を持った子を産ませるのだ。 孕み胎となったものは、神の力に耐えうる器でなければならない。しかしながら、ウラミガミとなった創造神の力に耐え続けられるものは居らず、現在に至るまでその全ての生命は障りに触れ、発狂し、死んだ。 孕み胎になると言うことは、つまりは死ぬということだ。神は番を産めない孕み胎に興味は無い。ソレが番の魂を引き継いでなければ産みの親がどうなろうと構わない。一度や二度、障りに触れても耐えうる者がいたが、三度目には耐えられない。孕み胎の役目は番を生み出すことだ。産むまでは何度でも神と交わらなければならない。絶望から、自ら障りを産むものも少なくは無かった。 そうして何百年も繰り返した忌まわしき交わりのおかげで、人類の今日がある。 これは、とある兄弟の話。孕み胎になった兄と、その兄を愛する弟の物語。 結論を言っておこう。この物語に大団円などはどこにも存在しない。何故なら今ここでこうして語っているこのボクこそが、愉快なこの舞台を仕組み、愚かな創造神を苦しめ、その元凶を生み出した邪神なのだから。 本来存在するはずの無い世界の異物が暗躍するならば、創造神であろうとなかろうと、物語を幸せに導く事は決して出来ないのさ。

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