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第27話
すると、そこには写真が無造作に入っていた。そして、底の方にもいろいろと入っているのが見えた。なんでこんなところに写真が入っているのだと訝しく思ったが、次の瞬間、ユイトは息も苦しくなってしまいそうなほどに絶句してしまった。
その写真に納まっていたのは、奏一と浩一郎だったからだ。一度は愛した相手だし、忘れもしない。ユイトと付き合っていた頃と、何ら変わっていない浩一郎の姿がそこにはあった。私服で、奏一と仲良さそうにツーショットで写っていた。
『なんだ……これ……』
いけないものを見てしまった……。奏一からきちんと聞いてから引き出しを開ければ良かった。とても後悔したが、してももう遅い。ただ、奏一もピンポイントでオープナーが入っている引き出しを教えてくれなかった。それも謎だった。
「左から二列目の上だよ」
ユイトが左端を開けたことに、奏一は気づいていないようだった。写真を見られても別に構わないということなのだろうか。
ユイトはそっと左端の引き出しをまた閉じた。
「あぁ。わかった」
何とか平常心を保ち奏一に対して返事をしたが、いろいろなことが頭を駆け巡っていた。見てしまった写真を思い出すと、まるで付き合ってでもいるかのような印象だった。きっと、そうだったのだろうと思う。まさか、自分の元彼が奏一と付き合っていたなんて、なんという巡りあわせだろうか。今は誰も相手はいないと奏一は言っていたが、果たして本当だろうか。いや、それを信じるとして今浩一郎はどうしているのだろうか。そもそも、なぜ二人が大人になって仲良くしているのだろうか。謎は深まるばかりだった。
ユイトとしては、浩一郎は奏一と付き合うためにユイトと別れたのだろうかなどとも思ってしまうが、地元を離れている奏一が、地元にいるはずの浩一郎とどういった繋がりがあるのかという疑問もわいた。
しかし、この気持ちを引きずってはいられないと思った。奏一の誕生日だから。こうして、二人で過ごさせてもらえるだけでも、十分に有り難いことなのだ。ユイトは、見てしまった写真のことは忘れて、奏一との時間を楽しむことにした。
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