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第36話

「あ?別に……呼び方なんて、これまでと同じじゃだめなのか?」 「だってさ……お、俺たちって両想いなんだよね?付き合ってるって俺は思ってるけど……」 「それは……俺もそう思ってるけど……そういや、好きだとは言ったけど、ちゃんと付き合おうとか言ってなかったかもな」  お互いに好きだとわかったのなら、それで万事片付いたと思っていたが、こうしたことはちゃんとした方が良いのだろうか。恋愛経験がさほど多くないユイトには詳しくわからない。 「だろ?じゃ、俺から改めて言おうか。ユイト君……付き合ってくれるかな」  奏一が、しっかりとユイトの目を見つめて告げた。奏一に馬乗りになっているという体勢ではあるが、まるで、プロポーズでもされたかのような心持ちがした。 「あ……当たり前だろ……俺の方こそ、ずっと一緒にいてくれよ」 「喜んで。じゃあさ、これからは俺の事きちんと名前で呼んでほしいな。奏一って」 「わかったよ……でも、慣れるまで時間かかるかも」 「いいよ」  腕を伸ばしてきて、奏一がユイトの顔を引き寄せると唇同士が重なった。そして、すぐに一度唇を離して至近距離で見つめ合う。この大事な人をずっと失いたくない。二人は互いにそう思っていたが、それでも、本当にこれから先ずっと離れずにいられるのだろうかと、こんな時なのに、ユイトの心は不安で支配されそうになる。  そして、その不安をかき消すように今度はユイトから顔をさらに近づけていった。年老いても、死を迎えるその時まで一緒にいられるようにと願いながら、奏一の舌を自分の舌に絡めた。素直にユイトの舌に絡まってくる奏一のそれが、妙に愛おしく感じられる。ユイトは、思う存分に奏一の口内を探りつくし楽しんだ。 「ん……はぁっ……」  艶めかしい声を漏らす奏一に余計情欲をそそられる。そして、もっと貪りたいという欲がムクムクと湧き上がってくる。  が、またしても奏一に腕を突っ張って止められてしまう。 「なんだよ、今度は……」  ユイトは思わず再度イラっときてしまった。 「ねぇ……ここじゃ、ヤるとしたら窮屈過ぎない?ユイト君がいいんなら構わないけど、ベッドとか、行っちゃダメかな、なんて」 「え?あぁ。確かに狭いかもな。ここじゃ、あまり動けねぇし……」  そう言って、少し小っ恥ずかしくなり頬が熱くなる。  今いるソファーは大きくはないので、ここで愛し合うには狭いのだ。 「じゃ、移動するか」 「そうだね」 すぐにユイトは、伸し掛かっている奏一の上から退いた。

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