ユイトに続き奏一が立ち上がると、ひょいとユイトの膝裏と背中に腕を回して抱え上げた。奏一はユイトよりも身長が四センチほど高く、程よく筋肉質で細マッチョといった具合だ。優しい雰囲気のある奏一だが、逞しさを持っている。 　抱えられてしまったユイトは大いに狼狽えた。これではまるで、女になったような気がしたのだ。 「なっ、なんだよ、下せよ。俺は女じゃねぇし、歩けるっ！」 「いいじゃない、別に減るもんじゃないから。俺、女の子は好きになれないけど、コレ、やったらどんなかなって思ってたんだ」 　そう言うと、奏一がキスをしてきた。 「減るもんって……」 「やってみたかったんだよ、一度ね。いいだろ？誰も見ちゃいないんだしさ」 　甘く微笑まれると、ユイトは弱かった。奏一に逆らうことなどできないのだ。 「わかったよ……じゃあ、さっさと運んでくれよ」 「承知しました。お姫様」 「き、気持ち悪いこというなよ……姫ってなんだ、姫って……」 　寝室まで運ばれながらユイトが抗議する。 「ふふ。俺にとって君は姫様だからね」 「なんだそれ……そりゃ、俺が客の女に言ってることじゃねぇか」 「あ、そうなの？それは知らなかった。君は、お客さんを姫様って呼んでるのか。なんか妬けちゃうな」 「仕事だろ。営業トークってやつだよ」 　そうしている間に、寝室に着いた。ユイトにしてみればいつも何気なく入っている自分の寝室なのだが、今日ばかりは何だか柄にもなく緊張してしまう。 「じゃ、失礼して入るよ？」 　律儀にそう言って、奏一はユイトの背中を支えている方の手を使ってドアを開けた。そして、ベッドに歩み寄った。 「割とサイズのあるベッドだね。セミダブル？」 「あぁ。余裕がある方が好きだから」 「それ、わかるかも。窮屈に寝るのは嫌だよね。さぁ、どうぞ、お姫様」 　そう言うと、ユイトは優しくベッドに横たえられた。すると、奏一がそれに覆いかぶさってくる。