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四十七 不法侵入ですが?

 飯もそこそこに、俺は慌てて立ち上がると亜嵐の背後に回った。大騒ぎしては問題になる。事を荒立てぬよう、亜嵐の肩を掴んだ。 「おい」 「ん? あ――」  亜嵐は俺を見上げて、「見つかった」という顔をした。俺は顔を引きつらせながら亜嵐に立つように促す。 「須藤、コイツ、借りるよ?」 「え? はい。良いですけど……」  須藤の様子から、彼がこの人物が亜嵐だとは思ってもいないと判断する。岩崎だけが「これじゃない」感じで首を傾げていた。  亜嵐を連れてひとまず廊下の端の方へと連れ出す。この辺りは人通りが少なく、話をするにはもってこいだ。 「おい、亜嵐!」 「あれー。バレちゃった」 「バレちゃったじゃない! 部外者立ち入り禁止だって言っただろ!」 「須藤君が連れて来てくれたんです」 (須藤くん――!!)  どうやら、寮の前でうろうろしていた亜嵐に「どうしたの? 帰らないの?」と声を掛けられてホイホイと入ってきてしまったらしい。とんだ問題児である。 「結構バレないんだけどなあ。鈴木さんにはやっぱりバレちゃうんですね」 「お前、前にもやった?」 「風馬が大学の時とか、高校の時とか」 「こいつ……」  前科者である。恐らくだが、それ風馬が知らないところでやっただろ。そんで怒られただろ。目に見えるようである。 「とにかく、外出るぞ! 全く……」 「残念~」  風馬の部屋見たかったのに。そんなことをのたまう亜嵐を連れ、玄関ホールの方へと連れて行く。この辺りに店はないのだが、反省も薄いので反省しているとも思えないし、もう外に放り出して良いだろう。 「ん? 何だ?」  亜嵐を放り出してしまおうと玄関に向かった先で、何やら寮長の藤宮と副寮長の雛森が難しい顔をして話し込んでいるところに遭遇した。 「藤宮さん、雛森さん、どうかしました?」  内心、亜嵐の存在がバレないかとも思ったが、二人とも特に気に留めた様子もなくこちらを振り向く。 「ああ、鈴木さん。ドアが開かなくなっちゃって」 「は!?」 「ほら、これしか開かないんだよ」  どうやらドアが故障したらしく、入り口が十センチほどしか開いていない。 「今、業者さん呼んでるから」 「潤滑スプレーでなんとかなりそうなんだけど。寮には置いてなくてね」 「あー。じゃあ、今は外に出られない感じですか」  へらっと笑う亜嵐の声に、顔が引きつる。全く、悪びれた様子がない。 「うん。ごめんね。一時間くらいで来ると思うんだけど。まだ帰って来てない子には外でご飯済ませてもらうように連絡するつもり」 「――それは、大変です、ね……」  まさかの事態に、俺は頭を抱えたのだった。

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