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五十三 優しく触れ合う

「ん、あ……っ」  なんだかんだ、こういう雰囲気になるのは久し振りな気がする。舌を絡めながら、体温がじわりと上がっていく。 (色々あったからなあ……)  風馬も俺の前で色々とさらけ出したのが恥ずかしかったようで、まるで付き合ったばかりの少年のようになってしまっていた。こうして欲を示すのは、久し振りな気がする。 「一太さん……」  すり、と顔を寄せられ、目を閉じる。風馬の体温は心地いい。ネクタリンの甘い匂いが微かに香った。 「一太さん、最後まで、しても……良い?」  背中に手を忍ばせながら、風馬がそう問いかける。不安そうな表情に肉欲を滲ませた顔に、ドキリと心臓が疼く。 「……ん」  小さく頷き返す。最後まで。つまり、そういうことだ。今までは、指だけだったけど。  風馬の手が、裾から忍び寄る。皮膚を撫で、ゆっくりと衣服を剥ぎ取りながら滑っていく。心臓がドクドクと鳴り、体温が上昇する。 「あ……」  はらり、服をはだけさせられ、恥ずかしさに思わず顔を逸らす。風馬は少し緊張した顔で、俺を見下ろした。こういう顔は、珍しい。いつもはもしかしたら、虚勢を張っていたのかも知れないと思うと、緊張がほどけた。 (なんだ。風馬はイケメンだし、手馴れてるのかと思ってたけど)  思ったよりも、俺と変わらないのかも。そう言えば、デートはマックだったって言ってた。  つい笑ってしまうと、風馬が「何ですか?」と唇を尖らす。 「可愛いなと思って」 「何ですか、それ」  面白くなかったのか、拗ねたような表情を作る風馬に、余計に可愛いと思ってしまう。クスクス笑っていると、風馬はムッと表情を変えて乳首をきゅっと摘まんできた。 「あっ」 「一太さんの方が、可愛いですよ」 「んっ、……あ」  甘い痺れに、声が漏れる。 「ん、ふ……」  くにくにと乳首を弄くられ、甘い声が漏れる。風馬は唇を近づけ、突起にちゅうっと吸い付いた。舌先がツンと敏感な先端を擽る。甘い疼きが腰をざわつかせる。 「一太さんのココ、可愛い……。俺に触られて、嬉しがってるみたい」 「っ、ん……。俺は、風馬に触られんの、嬉しいし……」 「――っ……。ホント、可愛すぎて……」 「そんなこと思うの、風馬だけだけどね……」 「そんなわけないですよ」  ぐい、と腰を引き寄せられ、鼻先をくっ付けられる。キスされた訳じゃないのに、なぜか無性にドキドキした。 「こんなに魅力的なのに」 「ふふ」  恋は盲目。なんて言葉が浮かんだ。風馬が俺を好きなのを自覚するたびに、大切な気持ちが増えていくようだ。 「風馬、好き……」  囁きに、風馬がピクンと震える。切なげな顔で額をすり寄せ、瞳を震わせる。 「もう一回、言って……」 「……好きだよ、風馬」 「一太さん……。俺も。俺も、好きです……」  自然と唇が重なりあい、互いに夢中になって舌を絡ませる。  風馬の手が腰を撫でる。俺も背中に手回し、背筋に指を這わせる。風馬の皮膚がピクリと震える。何か言いたそうな顔で頬を赤くする風馬に、ちゅうっと舌に吸い付いた。 「あっ、一太、さん……」 「風馬も、して欲しいこと、言って……」 「っ……それって、してくれるって、こと?」 「……うん」 「……」  何を想像したのか、風馬の顔がじわっと赤くなる。 「っ、っと、その……」 「何だよ」 「……クチ、とかで、するのって――やっぱ、良いで」 「良いよ」 「っ」 「するよ? 全然、やってみたい」 「マジで」  そりゃあ、少しは恥ずかしいけど。別に嫌なわけじゃないし。それに――興味だってある。  俺は風馬の前に四つん這いになって、足元に顔を埋めた。風馬が息を呑むのが解ったけれど、構わずに下着に手をかけ、まだ反応の弱い性器に触れる。手で、触ったことはある。けど、こんなにまじまじと見たのは初めてだ。 「ほ、ほう……」 「一太さん、あんま、見ないで……」 「はは。ちょっと、優越感あるかも」  舌を伸ばし、先端をチロリと舐めてみる。風馬がビクッと身体を揺らした。風馬を見上げながら、先端をゆっくりと口に含む。思ったより、大きい。ちょっと待って。大きいな? てか長いな? 「……」 「一太さん……?」  風馬がハァと息を吐いて、俺の髪を撫でる。催促されているようだ。何とかゆっくりと口に含む。だが、上手く舌が使えない。結構、苦しい。 「んぁ、ん……っ……」 「一太さんのクチ……暖かい……」  興奮しているのか、風馬の性器はあっという間に硬度を増す。正直、気持ち良いとは思えないのだが。だが、風馬は不満を言うことはなく、むしろ満足そうだ。一度口を離し、陰茎を下から舐め上げるように舌を這わせる。 「ゴメン、下手、だよな……」 「いえ……なんか、済みません……。俺は、結構、興奮します……」 「なら、良いけど……」  風馬が良いなら良いのよ。けど、下手なのは変わらない。多分、これじゃイカせられないと思う。仕方がないので手も使って愛撫を続ける。 (これが、風馬の味……なんだな……)  白濁を舌で掬い取り、背徳的な気分になる。  今日、俺は風馬に、すべて暴かれてしまうだろう。けれどそれは、風馬のことを暴くのとも同義だ。唇で。舌で。肌で。指先で。五感の全てで、風馬を暴いていく。 「っ……、一太、さん……」  限界が近いのか、風馬が俺の髪を掴んだ。 「出そう?」 「っ……はい……」  一瞬、風馬が黙り込んだ。何か言いたげな顔で俺を見て、小さく囁く。 「……顔に、掛けても良いですか」 「――」  瞬時に、真っ赤になる。 (えっ。おまっ。それ) 「嫌なら、良いですけど」 「っ……嫌、ではないけど……。……もう……。あ、あんま、髪にかけんなよ……」 「はいっ」  嬉しそうにすんなよ。  なんだか、風馬のこういう所を知るの、ちょっと恥ずかしいな。顔にかけて見たいとか思われていたんだろうか。なんだか、改めて、俺って風馬にとってそういう対象なんだなって、実感する。  風馬の欲望がはじけて、顔に熱い粘液が掛かる。 「んっ……!」  反動で、ビクッと肩が揺れる。どろりとした体液が顔にかかるのが、こんな感じとは。思いのほか、ちょっと興奮してしまった。 「一太さん……。エロい……」  風馬が興奮して、唇に噛みついてくる。 「ん、んぅ……」  風馬の手が、俺の下腹部に滑り込んでくる。くち、と先端から漏れ出た粘液に触れられ、ゾクッと背筋が粟立った。 「あ……」 「一太さんも、興奮してる……」 「……ん、あ……っ、風、馬っ……」  ゾクゾクと背筋を震わせながら、風馬にしがみ付く。風馬は俺の首筋にキスをしながら、俺をゆっくりとベッドに横たえた。

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