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五十四 俺も好きだよ。
ギシ、とベッドが軋む。何度、風馬にこうしてのしかかられても、ドキドキするのはどうしてだろうか。恋、をしているからだろうか。
「一太さん……好きです」
囁いて、風馬の手が腰を撫でる。ぞくぞくと皮膚を滑っていく掌に、身体が蕩かされて行くようだ。
風馬が目の前にいる。それが、時々無性に、不思議な気持ちになる。別の場所で生まれて、別の人生を歩んできたのに、今では傍に居るのが当たり前になってしまったようだ。他の誰よりもきずなが強く、想い合うのも強くなるなんて、想像出来なかった。この気持ちが、ずっと続いていくのか分からない。けど、変化したとしても、風馬を愛することはきっと変わりなく続いていくという、確かな予感がある。
「風馬……」
名前を呼ぶ。それが、「愛してる」という言葉のように響いていると、互いに実感できる。優しく唇をふれあい、また離す。切ない表情に、胸が疼く。
風馬の指が、鼠径部に触れる。軽く刺激しながら肌を滑っていく感触に、甘く酔いしれる。風馬の与えてくれる快楽が好きだ。この気持ちは、風馬にしか呼び起こせないと、彼は知っているだろうか。
「風馬……、好き……。好きだよ……」
甘く蕩かされながら囁く声に、風馬が嬉しそうに笑う。
風馬は俺の膝に手をやると、ゆっくりと左右に割り開いた。こうして足を開かされるのが、恐ろしく恥ずかしい。けど、それをしているのが風馬だから、ただ恥ずかしいばかりではなくて。
「うっ……、ん……」
視線を感じて、僅かに腰を捻る。あんまり、ジロジロ見ないで欲しい。風馬は俺の気持ちなどお見通しのようで、フッと笑って掌で性器を転がすと、満足したように笑った。それからローションを手に取って、後ろにピタリと指を這わせる。
びく。身体が震える。指だけの快感は、既に身体は知っている。ぬぷ……とゆっくり指が沈んでいく感触に、ハァ、と息を吐いた。腸壁を擦りながら、指がぬぷぬぷと引き抜かれる。その先にある快楽を知っているせいか、知らずに腰が揺れた。
「こっち、結構慣れた?」
「っ……確認、すんな」
「でも、確認しないと――初めてだし」
「……平気、だと、思う」
風馬の喉が揺れる。獰猛な瞳で見下ろす風馬に、ゾクゾクと背筋が震えた。「じゃあ、指、増やすよ?」と言いながら、アナルを弄る指が増える。肉輪を僅かに押し拡げられ、ピリリと痛みが走ったが、一瞬だけでそのあとは平気だった。挿入される異物が大きくなったことで圧迫感は増えたが、痛みはない。
「あ、あっ……、ん……」
小刻みに声を漏らしながら、解す指の動きを感じる。抜かれ、また貫かれ、風馬の指の感触がじりじりと教え込まれる。
やがて風馬はずるりと指を引き抜いた。代わりに、猛った自身を押し当てる。
「……一太さん」
良いか? と確認するように、風馬が名前を呼ぶ。俺は小さく頷いて、風馬の腕にしがみ付く。
グッと先端を押し当てられ、穴を拡げるように先端がねじ込まれる。風馬が僅かに眉を寄せた。内壁の狭さに、一瞬風馬が押し返される。風馬はそれを強引に押し込み、先端をグリっと腸内へ挿入した。
「あっ……!」
びりっと、電流が走ったような痛みが、一瞬突き抜けた。
「っ、ゴメン、大丈夫? 一太さん」
「っ……、はぁ……は……あ、ん、大……丈夫。ちょっと、痛かった、けど……」
不安そうな風馬に、俺は二カッと笑って見せる。つながった個所がドクドクと脈打つ。酷く、熱い。少し痛い気もするが、騒ぐほどでもない。
「動いて……、良いよ」
「……でも」
「大丈夫、だから」
「……」
風馬は唇を結んで、それからゆっくりと一度止めた動きを再開した。じりじりと奥までねじ込まれ、ハァ、と息を吐く。内部を押し上げられるような苦しさに、息が切れる。風馬が顔を上げた。
「全部、入ったよ……」
「……っ、ん……、あ、……風馬が、入ってる……」
下腹部を撫でて、そう呟く。風馬と繋がれたことが、嬉しい。じわりとそれを感じていると、風馬が赤い顔で俺を見る。
「挑発しないでよ……一太さん……」
「して、ねーって……」
「してるよ」と短く言って、風馬が腰を動かす。ぬっと引き抜かれ、快感にぞわっと背筋が震える。
「あっ!」
そのまま、また突き上げられる。
「あ、あ、あっ……! ふう、まっ……んっ!」
「一太さん、可愛い……一太さん……」
ずっ、ずっと、腸壁を擦り上げられる。繰り返される動きに、息が切れる。中から擦られる快感に、喉を仰け反らせる。
「あっ、あ、んっ……!」
「好き……好きです……」
切なげに名前を呼ぶ風馬の背中に腕を回す。
俺も、好きだよ。そう囁いて、俺はぎゅっと風馬を抱きしめた。
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