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「綾、本当に大丈夫か?」 「大丈夫だって。仁は心配しすぎ」  俺の体調のこともあり、あの後仁は俺の家まで運んでくれた。仁に介抱してもらったお陰で徐々に調子が戻って来たことから、今は二人で学校へ向かっている。  ·····仁には休んだ方がいいと止められたが。 「真面目だな、綾は。こういう時くらい休んだらどうだ」 「今日は小テストもあるし、行かないと駄目だ」 「········でも綾は翠と同じクラスだろ」  正直、翠と顔を合わせるのは、キツい。だがそれでも、やはり翠と話をしたいという気持ちが強かったのだ。  ーーそして、気がかりなことがもう一つある。 「翠に何か言われたら連絡しろ。飛んで行くから」 「ああ········、分かった」 「何かあった時の為に一応休み時間の度にそっちのクラスには行くから」 「·····仁、過保護過ぎだろ」 「好きな奴のことだから当たり前だ」  先程のキスのことがあってから、仁は俺への好意を隠さなくなった。  そして先ほど介抱してもらってる時、再び仁に告白された。お試しでいいからとグイグイ詰め寄られ、押し切られてしまった俺は、つい首を縦に振ってしまった。  仁は、俺が翠を好きなことはとっくに気付いてる。それでも良いということなのだろうか。 「·····じゃ、何かあったら連絡しろよ」 「分かったって。早く自分のクラスに行け」  心配する仁を横目に教室に入ると、先に学校へ来ていた、こちらを見ていた翠と視線がぶつかった。一瞬表情を曇らせたように見えたが、すぐにぱっと顔を逸らされてしまった。  それがショックだったが、こんなクラスメイトもいるところで喧嘩をする訳にはいかない。翠と離れている自分の席に座り、翠のことを考えながら、午前の授業をぼんやりと受けた。  ーー昼休み 「綾、気晴らしに屋上行かないか?」 「ああ、ちょっと外の空気吸いたいかも」  朝話した通り、仁は休み時間の度にクラスに来た。度々翠の視線は感じたものの、干渉はして来なかった。  仁がいたからということもあり、翠とは結局話を出来なかったのが残念だが。  昼休みに迎えに来た仁と食堂でご飯を食べている間、俺は仁と何を話したのか覚えていない。  ーーずっと、翠のことを考えていたから。  仁は俺のことを気にかけてか、屋上に行くことを提案してくれた。  珍しく誰もいない屋上に着いて外の空気を吸い込むと、少しだけ肩の力が抜けた気がした。 「綾、ここに座れ」 「っえ、」  座るようにぽんぽんと仁が叩いたのは、仁の膝の上。  ーー今日の仁、いつになく積極的じゃないか?  いや、いつも俺への距離は近かったが、今日はいつもの比でない気がする。 「·····わっ!」  そんな躊躇している俺の手を、仁はグイッと引いた。  俺はバランスを崩すと、そのまま仁に包まれるように腕の中にすっぽりと収まってしまった。 「·····じ、じん··········?」 「綾、聞きたかったことがある」 「ーー翠と、部屋でなにしてた?」  頭の上から降ってくる、仁のいつになく低い声に背筋が凍りついた。  背に感じる仁の鼓動と体温に包まれながら、俺はなんと言い訳をしようかと必死に思考を巡らせた。

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