翠よりも僅かに太く、筋張っている指が入ってくる。 　昨晩から翠と体を重ねていたからだろう、簡単に奥まで飲み込まれていく指に腹が疼き、きゅっと仁の服にしがみつくと、仁はやっぱりな、と冷たく呟いた。 「·····お前、翠と寝ただろ」 「··········っ！」 　ーーやはり、さすがの仁でも分かってしまうのか。 　仁の言葉に背筋が凍りつくと同時に指先に凝りをえぐられ、強ばっていた体が仰け反ってしまう。 「ひ··········、ぁッ··········」 「気持ち良かったかよ、翠とヤるの」 「何回寝たんだ？」 　凝りをぐりぐりと圧迫される度に言葉を浴びせられ、恥ずかしいやらやめて欲しいやらで思考はぐちゃぐちゃだった。 　パンツの中が先走りで溢れ、次第に熱が腹を満たすと、下腹部から何かが込み上げてくるのが分かった。 「っや··········ッ、じ·····、ん··········、やぁ··········ッ」 「イきそうだろ。いいよ、イけよ」 　凝りをぐりぐりと潰されながら先走りで濡れた性器を荒々しくしごかれた瞬間、頭の中がとろけたように真っ白になり、膨張した性器の先から白濁のどろっとした体液が弾けてしまう。 「ーーっぁ·····、ぅ··········、っ··········」 「········あー、翠にもそんな顔見せたかと思うと本当腹立つ」 　イラついたように舌打ちした仁は、肩で息をしている俺を真下から覗き込み、 「俺と翠、どっちがイイか後で聞かせろよ」 　と、耳に甘く口付けた。 「···············ぁ、」 　尻を両手で鷲掴みにされ、割り開かれた震える窪みにどくどくと脈打つ先を宛てがわれると、冷や汗が額を伝った。 　ーー嫌だ、翠以外となんて。 「俺で良いだろ、綾」 　顔、俺を呼ぶ声、体温、全部同じ。 　ーーそう、全て一緒だ。…………でも、違う。 　翠は笑うとくしゃっとなる顔が可愛い。人の懐に入るのが上手いくせに実は不器用だし、子供っぽいところもある。 　始まりこそ最悪だったものの、俺はいずれ翠を好きになっていたと思う。 　いくら他が同じだって、翠じゃないと駄目だ。 「············す、い、··········すい、が·····、いい··········っ」 「········綾、」 　切なく俺を呼ぶ仁が、かげりのある表情をした時だった。 　ーーバンッッ 「綾人くんっ··········！！」 　屋上の扉が勢いよく開き、聞き慣れた愛しい声が耳に響いた。すると、一気に込み上がってきた熱が目からぽろぽろとこぼれ落ちた。 　濡れた視界の奥、必死にこちらに手を伸ばす翠の姿を最後に、翠に見られたショックと溜まっていた疲労により、俺は意識を手放してしまった。