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「⋯⋯迂闊⋯⋯迂闊だったよ」
絞り出すように言った。
「朱音に会えない寂しさが募りに募って、朱音のお母さんから写真をもらって、それを眺めて寂しさを、仕事で辛い時には慰めてもらっていたんだ。一人で眠るのもこれでどうにかなっていたし。⋯⋯けど、今日は本当に花火を見させてあげたいだけだったから、そのままにしていたのだけど⋯⋯朱音がシたいって言うものだから、忘れていたよね」
あはは⋯⋯と空笑いをする紫音に、色々と言いたいことがあったが、その色々ありすぎてどこから訊けばいいのか、言葉が詰まった。
「⋯⋯引いた、よね⋯⋯」
「まぁ⋯⋯正直」
「⋯⋯だよね。こんな僕でごめんね」
「いや。しおんにぃの部屋なんだから、そういうのは勝手だと思うし、それに」
一旦紫音から離れた朱音は、両手を広げた。
「今日は生の俺がいるんだから、思う存分感じてよ」
照れ気味に言った。と、紫音の瞳が潤んだかのようにきらりと光った。
「⋯⋯久しぶりに会ってからずっと、朱音のことを感じていた。けど、それでも足りないんだ。もっと感じていい?」
「そりゃあ、もちろん。俺だって、もっともっとしおんにぃの温もりを感じたい。次に会う時まで忘れないぐらい」
紫音から抱きしめ、そのままベッドに倒れ込む。
布団をかけてくれた紫音が頭をぽんぽんしてきた。
「ふふ、こうやって朱音と一緒に寝るのは、いつぶりだろう。今日は特段いい夢を見られそうだよ」
「しおんにぃがいい夢を見られるように、ぎゅっとしててあげる」
「ありがとう。とってもいい夢を見られそうだよ。⋯⋯今度は、写真以外に朱音を感じられる物を作ろうかな」
「ん⋯⋯? しおんにぃ⋯⋯?」
聞き返しても、笑って誤魔化されてしまった。
次にこの部屋に訪れた時、何が置かれているのだろう。
想像⋯⋯はあまりしたくない。
「おやすみ、可愛い朱音」
「⋯⋯あ、おやすみ」
目を閉じても、撫で続けていた手がやがて止まると、小さな寝息を立て始めた。
規則正しい呼吸の音を聞きながら、朱音は紫音の頬に触れた。
前からきめ細かいと思っていた肌。俳優として特に気にかけているのだろうそのすべすべな肌を撫でていた。
瞬間、頬を緩ませた彼に小さな声で言った。
「⋯⋯お疲れ様。俺のために時間を作ってくれてありがとう。明日も頑張って。遠くからでも応援してる」
唇に触れた朱音は満足げに笑い、眠りについた。
最愛の人の良い夢を願って。
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