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「こんなことをしている間に、花火はとっくに終わってんな」
「ごめんね。朱音を喜ばせたかったのに、こんなことをしてしまって」
「別に文句を言ったわけじゃねーし。それに、元々俺から誘った⋯⋯みたいだし⋯⋯結果的に会えなかった分、しおんにぃと触れ合えてとても嬉しかった」
ベッドに腰かけていた紫音に抱きついた。
「朱音⋯⋯っ、もう、甘えん坊さんだな」
「へへ⋯⋯、しおんにぃ大好き」
「⋯⋯僕も大好きだよ、朱音」
抱きしめ返してくれた上に、額に頬に、そして、唇にキスをしてくれた。
その愛情表現にくすぐったくて、身動ぎをしていた。
「そういえば、しおんにぃの部屋に行くの、初めてだったな」
「そうだったね。昔は僕が朱音の家に行っていたから、形は違えども、こうして朱音を招くことが出来て良かった」
嬉しそうに笑う。
昔の紫音の部屋も行ってみたかった、と言うのは無粋だろう。言葉を噤んだ。
しかし、そんなことよりもだいぶ気になることがあった。
「なぁ、しおんにぃ」
「ん?」
「さっきも、気になったんだけどさ⋯⋯」
「うん」
「⋯⋯部屋のあちこちにある俺の写真は何なの」
さっきのこと。部屋に入った瞬間、まず目に映ったのは、ベッドの頭上に、チョコを食べたのだろう、口の周りを汚して無邪気に笑う幼稚園程度の朱音が壁一面に引き伸ばした大きさで、しかも金色の額縁に飾られていた。
それで、若干熱が冷ましかけていたところに、ベッドに丁寧に寝かされた時、自然と天井を仰いだが、そこにも昔観ていた戦隊モノの変身アイテムを持って、ポーズを決めている幼い頃の朱音の姿が頭上の写真と負けず劣らずの大きさで貼ってあった。
行為よりもまず先に訊きたいものの、自分から誘っておいて途中で止めさせるのは野暮だと、それにそれを遮るように紫音で視界いっぱいになったものだから、ひとまずはと続けていたのだが。
微笑んだ表情のまま固まっていた紫音の額から、汗が吹き出していた。
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