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Sleep With 7

「同じ大学に行きたいかどうか、って質問。俺としては一緒のところに行きたい。千佳さんが望んでくれるなら、心強いとさえ思う。だけど、僕が目指してるのは東京の大学だよ?千佳さんと離れても平気なの?」 「大学になったら一度一人でやってみようと思ってたから問題はない。ひとつあるとしたら虫の問題だけだ。なるべく虫の少ない地域に住みたい、とは思ってる。」 虫に対するトラウマは相当のようだ。 「Gはどこにでもいるけど、高層階ならあまりでないとは聞くけど、本当かどうかは知らない」 「……となると都心か?」 「……部屋はどの辺に借りる予定なの?」 「大学に近いとこ。で、高さのあるのとこ。地震が怖いけどな。虫より確率は低いだろ。ところで、大学同じにしたら、学部も同じになるけど問題ない?」 「……え?森下も検……」 「俺は弁護士志望。親の会社は兄貴が継ぐし、事務関係は姉ちゃんが締めるだろうから、俺は顧問弁護士になろうと思ってる。部屋は買う予定だからファミリータイプ。防音もしっかりしてるとこ。雑音は嫌いなんだよ。先に不動産投資して必要なければ貸せばいい。株で多少儲けてるから、部屋の1つ2つ買っても問題ない。」 ――どこまで完璧な男なんだろう…… 「大学4年終わるまでに、添い遂げてくれる相手を見つけられるといいな。仕事に就いてからじゃ、お堅い仕事柄難しいだろうからな。」 そこにこの男がいないのは確定なのだと思い知らされる。もし、自分もこの男の躰にのめり込んだら、諦めることが出来るのだろうか……? 『リピーターは多い』 この言葉の裏に隠された言葉の意味を後々知ることになるだろう。男も女も分け隔てなく抱ける男。 「うちに来るってことは全員森下だから下の名前で呼べよ。姉ちゃんは『千佳』呼びしてんのに俺だけ苗字って変だろ。俺は悠斗、おまえは伊織だったよな?」 「うん。呼び捨てでいいの?」 「くんとかつけられる方が気持ち悪い。もう持ち出せんな?姉ちゃん、そろそろ着くらしい」 腕時計を見ながらメールの確認をしたようだった。スマホと連動したものだ。 冷蔵庫と冷凍庫にあった食材は全て持ち出して、袋に詰め込むと調味料くらいしか残っていない。 「大したものねぇな。食生活が躰に現れてる感じ。姉ちゃんの飯食えばもう少し肉つくな」 自分だって無駄な肉などついてないくせに、と思う。男らしい綺麗な顔立ち、理想的な体型、背も高く優しさがあり、成績優秀、少し性癖に難がある以外は完璧すぎる。 「出るぞ?」 「うん」 なんだろう……この人と一緒にいることへの安心感のようなもの。 「大丈夫だった?熱っぽくなってない?」 「千佳さん、お仕事もあるのにすみません。お世話になります。」 「あーん、可愛い。礼儀正しい子は好きよ。ずっと愛でてたいわ〜」 「こいつ、碌な食生活してなかった。冷蔵庫の中身持ってきた。って言ってもほとんど入ってなかった。だから細いんだよなぁ」 「あたしが食べさせてあげるからねぇ〜。もう、卒業までうちにいたらいいのに」 「……なら、アパート解約させるか?寮費に入れてもらってる分の半分は食費として姉ちゃんがもらって半分は自分のために貯めるなり使うなり生活費は必要だろ。」 「そっか、別に遠慮することなかったのね。寮費いくら払ってもらってるんだっけ?」 寮費の金額を言うと、千佳は 「半分も要らないわ。3分の1。で、残りは自分に使いなさい。悠斗の部屋は一番広い部屋だから机とベッドのひとつくらい置けるでしょ」 「なんなら同じベッドで寝てもいいけど?」 「男二人で?……でもサイズ的にはあんたのベッドでかいから寝れないことないのかァ……」 「……本気にすんなよ」 ――半分は本気だったけど 遊びに出れなくなるなら代用品は必要になる。躰の相性は悪くなさそうだった。ゴムをつけて普通にイケるくらいには中途半端な挿入でも気持ちよかった。全部埋め込んだ時に、どんな反応をするのか楽しみではあった。 そのための仕込みをするには十分な時間が出来たことに内心ほくそ笑んだ。

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