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第5話
――コンコン
「太刀矢―、居る?」
「おお。入って」
「お邪魔します」
「どうぞー」
二段ベッドの下段に腰かけていた太刀矢が、持っていたスマホを放り投げた。
「わざわざ剣崎先輩に出ていって貰わなくても……」
「え? 先輩居た方が恥ずかしいかと思ったんだけど。剣崎先輩って、結構からかったりもしてくるタイプの人だしさ」
「あ、確かにそうかも。……ありがとう」
「いいえ。じゃあ、早速着替えて貰おうかな……。うわ、やべ緊張してきた」
「なんて太刀矢が緊張するのさ……」
そう言って部屋の中に入ってから思った。『何処で着替えるんだ?』と。とりあえず太刀矢の勉強机の上に服を置いて、振り返る。
「……カーテン閉めてよ」
ベッドの出入りする所には、一段目にも二段目にも簡易のカーテンが付いている為、それを閉めてと伝えた。
「ですよね……」
少し残念そうな顔をしながらも、案外あっさりとカーテンを閉める太刀矢。
ガサガサと音を立てながら、袋に入った新品のメイド服を引っぱり出す。
「うわ、なんだこれ。どうやって着るんだろ……?」
「手伝おうか?」
「だ、大丈夫」
手早く部屋着を脱いで畳み、とりあえず一番分かりやすい部分であるワンピースを着てみようと手に取る。上半身部が白っぽくて、下半身部は黒っぽい。黒地のスカート部分には、既に白いエプロンのようなものが縫い付けてあった。
普段着る機会のないワンピースに、上から着るのか下から着るのかが良く分からなくて、もたもたしてしまう。どうにか下から首を通してスポッと顔を出すと、思いの外デコルテが大きく開いた服であることに気付いた。「よく分からないから皆が決めたやつでいいよ」と碌に話し合いに参加しなかった弊害だろう。
そして、ワンピースの上に黒いコルセットのようなものを付ける。紐が沢山あって着るのが大変そうだと思ったら、脇がファスナーになっていて、思ったよりは簡単に身に着けることが出来た。しかし……。
「やっぱり鎖骨は丸出しか……」
残念ながら、全体的に見た布面積には変化が無かった。
この黒いコルセットは、本来であれば女性の胸の膨らみと腰の細さを上手く強調するのだろうけど、膨らみのない男の胸部では、ただただ布地を寄せるだけだ。
「屈んだら胸見えそう……」
「もういいか!?」
「ちょ、ちょっと待って! もうちょっとだけ!」
慌てて、カチューシャとやたら長い靴下を履いて、どうにか完成させた。
「いや、本当に何の罰ゲームだよこれ……」
「もういい!?」
「いいよ」
かくれんぼかよ……。カーテンが開くまでの数秒が、やけに長く感じる。シャーッという軽快な音と共に開いたカーテン。同時に、僕に視線を向けた太刀矢の目も見開かれた。
「ね、猫谷……ッ!」
勢いよく立ち上がった太刀矢が、二段ベッドの天井に勢いよく頭をぶつけてしまう。
「ちょっと大丈夫!? すごい音したけど……」
慌てて駆け寄って、太刀矢の前にしゃがみ込む。
「いててて、ごめん。だいじょう……ぶ……」
「太刀矢?」
そのまま固まったように動かなくなってしまった太刀矢の目の前で、数回手を振ってみる。十数秒ほど無反応だったが、突然ビクンと動いた後、凄い勢いで自分の両目を手で覆った。
「むむむ胸っ、見えてる……!」
「え? ああ、ごめん」
「うわあああ……ねえ、やっぱりメイドやめない?」
「あー……俺、似合ってないもんな」
「……そうじゃなくて!」
目を覆っていた筈の太刀矢の手が、いつの間にか僕の両手首を掴んでいた。
「太刀矢……?」
「あぶないって、やっぱり」
「ああ、胸元な。当日気を付けるように、模部に言っておく」
「は? ……なんで今、模部が出てくんの?」
珍しく苛立ったような声色の太刀矢に驚く。
「だ、だって……太刀矢は模部が好きだから、模部のこと心配してるんだろ……?」
「はあ? え……いや、俺が好きなのはお前だけど」
「え?」
「俺は猫谷が好き」
「う、うそ……」
「うそじゃないって……寧ろ、なんでそんなことになってんの?」
なんでって……そんなの、決まっている。いつもなにかと模部に話かけているし、スク水が似合う人とか、自分が女だったら誰と付き合いたいとか、女体化したら誰が一番エロい身体かとか、そういうの今まで全部全部、模部の名前をあげてきたじゃないか……!
僕がそう言えば、「それは……ヘタレですみません……」と目を泳がせながら、本当は全部僕が一番だったと真剣な顔をして言うから、僕はどうすれば良いのか分からなくなってしまう。
「じゃあ、太刀矢は本当に僕のことが好きなの……?」
「うん、そうだよ。猫谷は?」
「え?」
「猫谷は、俺のこと好き?」
そんなの、ずるいじゃないか。だって答えは「はい」しかない。でもそう言ってしまったら、その先はどうなるんだ? 今まで読んできた数々の漫画のシーンが頭のなかでグルグルと混線している。……え、ちょっと待て。ここではいって言ったら、このままエッチなことになっちゃうんじゃないの……? 待って、待って……! だって、僕、準備とかそういうの……な、なんにも出来ないのに……!?
「わ、わかんないっ」
「……嫌いじゃない?」
だから、そんな聞き方はずるいってば。
「嫌いなわけない……」
「よかった」
ふにっと唇に柔らかいものが触れて、ちゅっと軽いリップ音がなった。
「あっ……」
「これは? いやじゃない?」
「んぅ、……いや、じゃ……ない……」
ベッドの上に引っぱりあげられて、そのまま奥へと押し込まれた僕は、気付いたら両手が壁に縫い付けられていた。ちゅくっという音が脳に響いて、熱くてぬめった舌が口の中に入り込んでくる。
「ふ、ぁ…、ン」
両手首が太刀矢の片手に束ねられて、太刀矢の自由になったもう片方の手がもぞもぞと身体を這っていく。
「ん、っン……っあ、や…」
下から太腿を滑って、腰のラインを確かめるように撫で、皮膚と血管ごしに肋骨に触れる。そうして上ってきた大きな手はやがて胸に。白い布地越しに、胸の突起をぐりぐりと押し込まれた。
「ッあぅ、ン、やだっ……」
「ごめん」
そう言いながらも止まらない太刀矢の手。執拗にグニグニとそこを弄られて、未知の感覚に腰が震えた。口内で好き勝手する太刀矢の舌をなんとか押し出そうとすると、興奮したように絡めとられ、違う、そうじゃないのにと心の中で言い訳をする。知らない味。知らない感覚。ぶつかったせいで眼鏡がズレる感覚があって、薄っすらと目を開くと、こちらを熱く見つめる太刀矢の視線とかち合った。
「あっ、ん、ぅ…みるなぁ」
「ごめん、無理だ」
「んや、ぁッ…も、やめ、…んぇ」
「猫谷……あんまり声出すと隣に聞こえる」
耳元で切羽詰まった声がしたかと思えば、再び口を塞がれた。漏れる嬌声が太刀矢の口の中に埋もれていく。胸への刺激がいつの間にが両方になっていて、僕の手は縋るように太刀矢の背中にまわっていた。なんで……いつの間に? 舌を強く吸われて、僕と太刀矢の混ざり合った唾液が、太刀矢の喉を通っていった。
「うそ、っや…きたない……」
「汚くないよ。……寧ろ、なんか……猫谷の唾液、甘くない?」
「……先輩にもらった飴なめた、から?」
「もも味?」
「あってる……」
「……かわいい」
さっきまでの深いキスが嘘みたいに、軽く触れるだけのキス。そのままリップ音を立てながら、瞼に、頬にとキスをされて、首筋へと顔が埋まった。触れてくる唇も、髪の毛も、吐息でさえもくすぐったい。
「やだ、そこ…や、ぁ! くすぐったい…ッ」
「……」
ぬるりと今までとは違う感覚がして、ビクリと身体が跳ねる。舐められてるんだ……。時折軽く歯を立てられて、かぷかぷと皮膚が食まれる。
「んっ、あ、アッ、……ぅ」
「猫谷、声」
「ふ、ぅあ…ッ」
太刀矢の手は、僕の胸を弄るので忙しいらしい。僕は太刀矢の服を握っていた手を片方離して、震える手で自分の口を押さえた。
「っ、ん、……ぁ、ぅう」
両胸の突起はすっかり芯をもってピンッと硬くしこり、弄られ続けたせいか、初めのころよりも確実に刺激を拾う。服越しにきゅうきゅうと摘ままれて、逃げるように背中を丸めると、前に傾いた首に甘く歯を立て吸い付かれる。
「ッあ! ひ、ぅあ…っんん」
カリカリと胸の尖りの先端を引っ掻かれるのが気持ち良くて、声が抑えられない。今度は強請るように胸が突き出る。首筋に埋まった顔が、名残惜しそうに軽く皮膚を吸い上げてから、胸元の布を下へと引き下げた。
「あ……」
くしゅくしゅとして伸縮性のある生地が伸びて、赤く腫れ上がった乳首が露わになる。
「すご……めっちゃえろい」
「や、見ちゃ、だめ…っ」
「……わかった」
そう言った太刀矢の顔が近づいてきて、そのままパクリと乳首が口へと含まれた。
「――んあッ!?」
「見はしない」
歯で軽く挟むように甘噛みされて、そのあと舌の根元から先でぞりぞりと舐められる。何度も角度を変えて執拗に。そして、じゅうっと吸われた。男なんだから、吸われたって何も出ないのに。散々弄られて敏感になってしまった乳首には、強すぎる刺激だった。
「あっ、あ、…ぅッ!」
壊れたように意味のない言葉ばかりが口から零れる。チロチロと舌先で舐られてから乳輪ごと強く吸われ、ぶぽッと下品な音を立てて、ようやく口が離れた。唾液まみれになった口元を乱雑に手の甲で拭った太刀矢は、意地の悪い顔をしながら、僕の胸を指差す。
「見てみ、ここ」
「あ……」
唾液を纏って厭らしくぬるついたそこは、テラテラと光を反射する。女の子みたいにぽってり赤く腫れ上がって、もう太刀矢の手は胸元の服の生地から離れたのに、胸の尖りに生地が引っ掛かって、未だに胸は露出したままだ。元の位置に戻ろうとする生地のゴムが、グイグイと乳首を押し上げてきて、それすら気持ち良くなってしまう。
「や、やだ、っぁ……、これ、いやぁ……」
「嫌なの? ココ、こんなにして?」
太刀矢の視線の先にあるのは、スカートを押し上げている……ソレ。女の子の穿いているスカートならありえないその膨らみは、正に雄の象徴で……。かああっと顔が熱くなる。
「ち、ちがう……」
どうにかそれを隠そうと足を閉じようとするも、足の間には太刀矢がいて閉じることが出来ない。スカートの裾をできるだけ引っ張って浮かせて、どうにか勃ち上がるものを隠そうと試みたが、軽く擦れるスカートの裏地ですら刺激になって、目に涙が溜まってきた。
「あーあ、キスと乳首だけでこんなにしちまって……」
「だってぇ……」
「あんまり生地に触れると、シミになるぞ?」
「そ、そっか……」
「……俺がソレ、どうにかしてやろうか」
「え!?」
するりと太腿を撫でられ、スカートを少し捲り上げて中に入ったかと思うと、近くにあった顔が遠のき僕のスカートの中へと消えていく。
「う、そ……なに、するの?」
「いーこと……うわ、もうパンツぐしょぐしょじゃん」
「やっ……」
下着ごとぬちゅぬちゅと数回擦られてから、ウエストゴムに指がかかって、ずるりと引き下ろされた。ひやりと空気に触れて窮屈さが消え、自由になった感覚があったかと思えば、次の瞬間には熱い何かに包まれていた。
「あッ!?」
スカートの中で、何かが起きている。未知の快感に震える内股。引ける腰が、伸びてきた手に掴まった。柔らかくて熱い何かが僕の股間を包み込みながら、ずろろろろと前後する。じゅうっと吸われて、強い射精感にびくびくと腰が震えると、咎めるように根元が握られた。視覚情報が無いせいか、次に何が起こるのか分からなくて感覚が過敏になってしまう。
「ッあ、なに、なんで、ぇっ…! イキた、…ッ、イかせてぇ」
泣きながら懇願して、スカートの布越しに、頭であろう膨らみを両手で押さえた。
「太刀矢、っ! たちやぁ…こわ、ぁい! 顔見たい、……っ」
ピクリと頭が動いて、ピストン運動が激しくなって再開されたかと思うと、今度は睾丸も柔く揉まれた。ピクピクと震えて、限界なのが自分でも分かる。チカチカと点滅し始めた視界。呼吸も苦しくなる。背中を丸めて、スカートの中に埋まる頭を抱きかかえた。乳首に引っかかっていた服が突起を乗り越え、両方同時にピンッと刺激される。
「あッ!? やっ、も、イく、い、ぅ……ッあ――っ!!」
ビュクビュクと射精して、全身が痙攣のように震えた。視界が真っ白になる。
壁に背中を預けてなんとか呼吸を整えていると、スカートの中から太刀矢がもぞりと顔を出した。口を閉じたままで荒く息をしている。目にはありありと興奮が見えた。枕元からティッシュを二、三枚雑に抜き取ると、そこに口を開けてデロッと白濁を吐き出す。
「あっ……!」
そっか、僕、太刀矢の口の中に……!
「ご、ごめん」
「ううん。やったの俺だし。気持ち良かった?」
「……う、うん」
「猫谷のちんこも拭くから、スカート捲ってくれる?」
「うん……」
言われるがままに、膝立ちになってスカートをたくし上げる。
「……」
何故か無言の太刀矢が気になり、見つめたままで小首を傾げると、ごくりと大きく動く目の前の喉仏。
「太刀矢……?」
「ごめん、なんでもない」
そう言って太刀矢は僕の股間を拭き始めた。その刺激に再び勃ちそうになって、必死に意識をそらしていると、しゃがんでいる彼の、部屋着の下腹部が膨らんでいることに気付く。
「あの、太刀矢、その……もう良い……。それより……」
「ん?」
――好奇心か、罪悪感か。
「俺もそれ、やる」
「……え?」
言うが早いか、僕は四つん這いになって太刀矢の部屋着のズボンを引き下ろした。
「うわ……すごい」
グレーのボクサータイプの下着は、中心部が先走りで濃く変色していた。むわっとした熱気と、独特な性の香り。
「お、俺のは良いって!」
「でも……太刀矢、これどうするの?」
「お前が部屋に戻ったらヌくから!」
「……」
下着越しに、そこにチュッとキスをしてみる。温かくて、窮屈そうにピクピクと動いて変な感じ。
「な!? おい、もういいって、猫谷!」
太刀矢はさっき、下着越しに擦っていたんだっけ……? 見よう見まねで、僕も下着越しにスリスリと撫でてみる。僕よりも一回りくらい大きいんじゃないかと思われるそれは、濡れてピタリと肌に張り付いているので、しっかりと形が分かった。
「き、きもちい……?」
「え? 微妙……。あ、いや! 猫谷が擦ってくれてるっていう視覚的興奮だけでもうイけそうではあるんだけど!!」
慌てて胸の前で両手を振る太刀矢に、なんだか面白くない気持ちになる。僕は元来、結構負けず嫌いなところがあるのだ……。むっとしながら下着に手をかけズリ下げる。
「……」
「おあっ!?」
何度も一緒にお風呂に入ったことがあるから、何となくは見たことあったけれど、こう目の前でまじまじと見るのは初めてだった。やっぱり僕のよりだいぶデカいし、なんかグロいよな、これ……口に入りきるのかな……? 試しにパクリと先端を口に含んでみる。ぶにぶにしていて変な感じだし、苦くて美味しくない……。それに、僕と同い年のクセに、何故が筋が浮いていて、色も赤黒くて、大人の人みたいでちょっと気持ち悪いし。
「……」
あれ、この後って、どうすれば良いんだっけ……? 太刀矢みたいに口の奥まで入れてみようと思ったが、大きくて全然入らないし。多く見積もっても三分の一くらいしか口に収まっていない。変に動くと歯が当たっちゃいそうだし、口を大きく開けているから、もう顎が少し疲れてきてしまった……。困り果てて、咥えたままで太刀矢を見上げると、ピクリと口の中のモノが動いてまた少し大きくなった気がする。……なんで?
「……猫谷は口小さいから無理――じゃなくて、舐める方が向いてるかも?」
「んぅ」
一旦、んべっと口から出して、視線で「こう?」と太刀矢に聞きながら、先端をペロッと舐めてみる。
「……そうそう」
地肌に触れるようにさらりと髪を撫でられて、少しドキっとしてしまう。
「慣れてきたら、裏筋とか竿の辺りも、その……舐めて欲しい、です……」
「ん……」
さっきよりも舌を大きく出して、アイスを舐めるように下から上へと舌をそわせる。しょっぱいし苦いけど、思ったよりも平気だった。横からレローッと舐めると、眼鏡のフレームに当たってしまう。
「あー……いいかも。根元の方、手で擦れる?」
「んー……」
ぺろぺろと舐めながら、言われた通りに根元を握って上下に動かした。重力に従って下まで垂れていった太刀矢の先走りと僕の唾液が混ざったものが、にちゃにちゃと音を立てる。太刀矢から低い唸りのような短い喘ぎ声が漏れた。僕、太刀矢を気持ち良くできてるんだ……。その満足感で、動きも大胆になってしまう。
「たちや、ぁ……ッん、ん、ふぁ…っ、きもちい?」
「めっちゃきもちいい、やばい……」
声を抑えるように片手で自分の口を覆って、もう片方の手で俺の後頭部を撫でている太刀矢。
カリ首のエラをなぞるよう窪みに舌を這わせて、溢れてきた先走りを口の中に吸い上げる。集まったそれらと溢れてきた唾液を、口の中に迎え入れた肉棒でぐぷぐぷと混ぜ合わせ、反り立ったそこの先端に垂らした。それをまた手で竿の全体に塗り広げて、先を咥える。大分慣れてきたので、口に入る部分を吸ったまま抜きあげてみると、カリが出ていく時に下品な音が鳴った。じゅっぽ、じゅっぽ、とそのまま口から出し入れしていると、太刀矢の腰の震えが強くなる。もう苦しいし、口の周りがべちゃべちゃだ。振動で眼鏡もずり下がってきて、直そうと思ったら口が離せなかった。後頭部を撫でていた太刀矢の手が、いつの間にか僕の頭を押さえつけていたから。少し油断して力を抜いたせいで、自分で思っているよりも深く口に入ってきて苦しくなる。
「っん、んんぅ…ッ!?」
ぐっぽぐっぽと止まない音。時折口蓋を突かれて、えずきそうに喉が締まった。
「う、ッ!? んンンッ…む、ぅン……っ!」
「っ、も、出るッ! ごめ、ねこたにッ! くち、離し……――――ッ!」
――ビュッ、ビューーッ!
勢いよく飛び出した精液。白くぼやけた視界。鼻や口に降り掛かった青臭い粘液。
熱をもったそれを肌で感じて、ようやく太刀矢の射精したものが顔にかかったのだと気付く。
「あ……」
だって太刀矢が、口を離せって言ったから……。
「ごっ、ごめん猫谷! まじでごめん!」
凄まじい勢いでティッシュを抜き取った太刀矢が、大量のティッシュを顔に押し付けてくる。眼鏡の鼻あてがめり込んでこるし、ごしごしと強く擦られて痛い。
「うぐっ……! いた、痛い!」
「ほんっっと、ごめん! 大丈夫!? 気持ち悪くなってない……?」
泣きそうな顔で俺の様子を窺ってくる太刀矢は、本当につい先ほどまで雄の香りムンムンで俺を翻弄していた奴と同一人物なのか……?
「気持ち悪くはないんだけど……」
「けど……?」
「これ」
「……あ」
――文化祭当日は抜けるような青空で、雲一つない晴天だった。
「……猫谷くん、メイド服は?」
「ク、クリーニングが間に合いませんでした……」
「……模部くん」
「い、家に忘れてきました……?」
僕たちの服には、ちょっと落ちづらい白い染みが残ったが……。
三人寄ってもどうにもならん!
――四人寄ってもどうにもならん……。しかし、カップリングは二組完成?
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