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十八の春、失神してしまうほどの衝撃的な出来事があったが、自分のことを想ってくれる西野寺碧衣と想い人となった。 自身の家である、桜屋敷家の兄・桜屋敷碧人から何か逆襲されるのではないかと恐怖に怯えつつ、碧衣の不器用な優しさが兄とは違うもので、新鮮さを覚えながらも、小さな幸せをひしひしと感じていた。 そんな日々を過ごしていたある夏の日。 世間では夏休みの時期であった。 いつものように、自分が知らぬ間に学校を辞めさせられ、一年分の遅れを取り戻そうと家庭教師をつけてもらい、勉強を必死になってやり、その家庭教師が帰って行き、部屋に一人になった時のこと。 「入っていいか?」 廊下側の障子越しから聞こえる愛しい人の声。 驚きと嬉しさを滲ませてそちらを振り向くと、障子にその人の影が見えた。 「うん、いいよ」 葵人がそういうや否や入ってくる。 葵人の頭一つ分程大きい彼の髪色は、以前は金髪に毛先が茶色だったが、今は心を入れ替えてなのか、黒髪になっていた。 碧衣を初めて見たのが金髪であったため、逆に違和感を覚えていた。 初めて見た時は恐く感じていた髪色。それが見れなくなってしまったのが、寂しい。 しんみりとしていると、碧衣はそばに寄り、葵人の目の前で正座をした。 「勉強、お疲れ」 「うん、ありがとう。碧衣君も受験勉強していたの?」 「あぁ、まあな。元々そんなに勉強好きじゃねぇから、やる気がないけどな」 「そうなんだ。けど、テストの順位、上の方じゃなかったっけ·····? 見間違い?」 「そうだったか? あんまそういうことにも興味がねーから、覚えてね」 「あはは、碧衣君らしい」 笑っていると、どこかそわそわした様子の碧衣に、「どうしたの?」と首を傾げる。 「いや、別に·····」と素っ気なく返事をしていたが、歯切れを悪そうな言い方でもあった。 その言い方をするのは、葵人に言いたいことがあるけど、場合によっては傷つけてしまうのではないかと不安そうにしている言い方だ。 兄がそんな言い方をしなかったため、最初は驚きの連続であったが、何度か交流していくうちに、根は優しい人なんだと分かり、自然と笑みが零れていた。 「碧衣君」 すっとそばに寄り、意外と滑らかな頬にそっと手を添える。 少しばかり驚いている様子の碧衣と目が合うと、優しく微笑んだ。

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