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ごめんね、大好き㉑

 智彰が寂しそうに笑った瞬間、俺は力強い物に押し倒された。いつの間にか床に横になっていた俺は、何が起こったのかもわからずに、ただ茫然と天井を見つめる。  自分が床に押し倒されったことに気づくまで、かなりの時間を要してしまった。 「なら、抱かせて」 「え?」 「俺、ずっとずっと葵さんを抱いてみたかったんだ」  そう言い終わる前に、チュッと智彰の唇が自分の唇と重なる。 「ち、智彰、待って……ふぁ……んん」  俺が口を開いた瞬間に、智彰の熱い舌が口内に侵入してくる。それに抵抗することさえできない俺は、呆気なく舌を絡め取られてしまった。 「はぅ……あ、あぁ……やぁ……」 「やばッ。葵さん、キスだけでそんな声出すの?エロ過ぎでしょ?」  智彰がそんな俺を見て、舌なめずりをする。  その時俺は思った。 「智彰も、成宮先生と同じ男だったんだ」  いつもの可愛い智彰は影を潜め、俺の目の前には、成宮先生と同じ獣の目をした智彰がいる。 「葵さん。もっと、もっとキスしよう」 「ふぁ、あ、あぅ……」  顎を捕らえられて、俺はなすがままに、唇と舌を智彰を差し出すことしかできない。  チュクチュクとやらしい音をたてながら深いキスを続ければ、俺の下半身に徐々に熱が籠っていくのを感じる。お腹の奥がジンジン疼いて、俺の口から溢れ出る声には、どんどん欲が混じっていった。  智彰に、キスだけでこんなんになってるのがバレちゃう……。  俺は、必死に智彰の腕から逃れようとしているのに、兄弟そろって馬鹿力らしく、それは叶わなかった。 「葵さん……キス、気持ちいいね」  耳元でねっとりと囁かれれば、ゾクゾクッと快感が背中を駆け抜けて行く。  俺は、なんて流されやすくて、淫乱なんだろう……って自分自身が情けなくなってくる。  チュウッと強く舌を吸われた瞬間、体がビクンビクンと跳ね上がった。  

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