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ごめんね、大好き⑳

「俺、この前、柏木さんに兄貴と葵さんがセックスしてた時の様子を聞いたんだ」 「えぇ!?」  俺は智彰の言葉に、思わず目を見開いたまま声を失った。  智彰は、一体何を柏木から聞いたんだ……俺の心臓が一気にバクバクと高鳴り出した。 「柏木さん、兄貴に抱かれていた葵さんを見て、本当にエロくて可愛かったって言ってた」 「あ、そ、そうなんだ……」 「それに、葵さんと兄貴が本当に愛し合っているのが伝わってきて、2人共凄く幸せそうだったって」 「…………」 「そんなこと、聞かなきゃよかったって後悔してる。でも、凄く知りたかった。知ることが怖くて仕方なかったのに……でも、知らずにはいられなかった」  智彰が今にも泣きそうな顔で俺を見つめる。その表情に、俺の胸は締め付けられた。 『智彰。葵に成宮先生の所に戻るよう説得してくれないか?』  智彰は、柏木に言われた言葉を思い出していたのだろう。苦しそうに顔を歪めている。 「ねぇ、葵さん」  智彰の腕の中にいた俺の体の向きをクルッと変えて、自分と正面から向き合わせた。 成宮先生に良く似ているのに、智彰の方が幼くて、無邪気で……俺に凄く懐いている、大きな犬みたいだった。 「ここにずっといたいなら、兄貴と本当に別れて俺と付き合おう?」 「……智彰……?」  智彰の言葉が俺はよく理解できなくて、ただ茫然と智彰を見つめた。 「でも、やっぱり兄貴がいいなら……兄貴の所に帰りな?葵さんの居場所はここじゃないし、あんたを待ってる奴がいるんだから」 「でもさ……智彰……」 「大丈夫。俺が兄貴にちゃんと電話しといてやるから。それとも、俺を選んでくれる?」  悪戯っぽく笑いかけられれば、素直に智彰と一緒にいたいと思ってしまう自分もいた。だって、智彰と過ごしたこの数日間は本当に楽しかったし、俺にしてみたら、救われた時間でもあった。 「俺、智彰とずっといる」 「兄貴と別れて?」 「うん。俺……智彰とずっと一緒にいたい」 「そっか。わかった。じゃあずっと一緒にいよ?」

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