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野良猫みたいな恋⑦

 可愛くない猫は、恋人が当直の日に家でウジウジいじけていた。  いつもは当直の成宮先生を探して、 「帰ります」  って声をかけるのが当たり前だった。  たった一晩離れるだけなのに……それでも寂しくて。別れを惜しむかのように頭を撫でてもらっていた。 「また明日な」  そう寂しそうに笑う成宮先生の切なそう顔が、凄くかっこよくて。俺は愛されてるなって思えたんだ。  そんな俺の変化に気付いた成宮先生が、珍しく『どうした?』ってLINEを送ってくれたのに、俺はそれさえ も無視した。  成宮先生と橘先生が一緒にいるのを思い出すだけで、胸がギュッと締め付けられる。涙が溢れ出しそうになったから、慌てて手の甲で拭う。 「ちくしょう……」  俺は鼻をすすりながら、真夜中のゲームセンターに駆け込む。そして、溢れ出す昂りをクレーンゲームにぶつけて、大量の景品をGETしたのだった。 「あぁ、眠い……」  結局閉店近くまでゲームセンターで時間を潰した俺は、帰ってから景品のぬいぐるみに埋もれて寝ていた。  リビングで寝てしまったせいか体中が痛くて。慌てて朝シャワーを浴びたから、髪はビショビショのままで出勤することとなった。  加えて、無意識にやたら目付きの悪いぬいぐるみばかり取っていた自分に、嫌気がさした。  重たい体を引きずって、なんとか病棟に辿り着く。 「ゾンビになったらこんな感じなのかな……」  頭の片隅で思う。 「あ……」  遠くで成宮先生と橘先生が楽しそうに笑ってる。最近、本当に仲いいよなって思う。気が付けばいつも一緒にいる。  正直、俺は成宮先生と橘先生が仲良くしてるのが面白くない。だって橘先生になんか逆立ちしても、恐らく地球が滅亡したって勝てる要素なんか一つもないから。 「なんで朝からあんなに爽やかなんだよ」  2人はコーヒーを片手に談笑をしているんだけど、それが悔しいくらい様になっていた。  眩しい朝日がスポットライトのように2人に差し込み、キラキラとより一層輝かせている。草原を駆け抜けるような爽やかな風が駆け抜けて行き、柔らかな薔薇の香りが辺りを包み込む。  それは、絵に書いたような美青年達だった。  なのに……自分は墓から這い出てきたゾンビ。全部が腐ってドロドロだ。   そんな橘先生と一緒にいる成宮先生を見ているうちに、段々感じるようになった危機感。その思いは日に日に強くなり、どんどん不安が大きくなってくる。  成宮先生の心変わりが怖くて仕方ない。  いつか、俺なんか捨てられちゃうんじゃないかって。  心は目に見えないから、形に表せないから。  だから、怖くて不安で仕方なかった……。  

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