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『しおんにぃ』··········紫音と呼ぶべきだろうか。とにかく、昨日の突然の行動に、考えても考えても何故そうしてきたのか、分かるわけがなく、思考がショート寸前──もう、ショートしていた。 「──っ」 屋上からどうやって家に帰ってきたのか、分からないぐらいだ。 「──かとっ!」 ひとまず、呆然としつつも真っ先に携帯端末で調べたのは、『キス 心理』。 『唇へのキスは言わずもがなの愛情表現。相手のことを心から愛している時に、男性はキスをする』 紫音が朱音のことが好きだから、あのようなことをした? それにしても、再開してからあんな態度だし、とても好きとは思えないのだが。 しかも、『兄』と慕っていた人からそうだと思われても、困る。 「·····言わずもがなの愛情表現、ね·····」 「朱音!」 「ひゃいっ!?」 母の突然の怒鳴り声で呼ばれたことにより、椅子からひっくり返りそうなぐらい驚いた。 そして、体制を整え直した朱音は、ほっと息を吐いた後、イラッとし、睨みつけた。 「な、なんだよっ! いきなり! しかも、朝っぱらから大声出しやがって!」 「なんだよは、こっちのセリフよ! さっきから呼んでも上の空なんだから! 何なのよ、昨日から! 何? 誰から告白でもされたの?」 「·····告、白·····」 女子から告白されたのであれば、ここまで反応はしないであろう。·····きっと、それはそれで世間一般的には『変』だと思われかねないが。 それは置いておいて。告白よりも急に唇を重ねてきた相手のことをどう思いますか? なんて、親に訊けるわけもなく、しかし、何と返せばいいのか分からず、結果、不自然に途切れた言葉に、頭に疑問符を浮かべているような表情の母が、朱音のことを見ていたが、急ににんまりとした顔をしだす。 「あらぁ? 図星かしら?」 「はぁ? どこでどうして、そんな発想になるんだよ!」 「だって、されましたっていうのが顔に書いてあるから」 「そんな顔もしてないんだが」 「やぁね、この私が間違えるわけがないわ。主婦の勘ってやつ。でも、お父さんに似て、顔だけは悪くないのだけど、蓋を開けてみれば、飽き性だし、勉強もそこまで良くないし、昔から誰かを好きになったって話も聞かないものだから、母さん、面白くないわって思ってたところなのよ」 「·····そーすっか」 性格も勉強の出来もアンタに似たんでしょうかと言い返そうとしたが、言うのも馬鹿馬鹿しくなってきて、適当に返事をする。

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