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「おっぱよ〜! なになに?! 朝からエッチなものでも観てるん?」 「·····っ! 大野!」 夢中に読んでいるうちに大野が住んでいる最寄り駅まで来ていたようだ。 電車内で突然大声を出すものだから、「うるさい」と、痛い視線があちらこちらで感じ、ここにいることに気まずく覚えた朱音は、「隣に行くぞ」と言って、隣の車両へと移る。 「何、朱音〜? エッチなものを観ていたことが恥ずかしくて、こっちに来たの?」 「ちげーわ。バカでかい声を出しているやつのせいで、いるのが気まずくなっただけだわ。しかも、そんなの観てねーし」 「まあ、いいじゃないか。俺とお前との仲なんだから、そんな恥ずかしがらんでも。俺の推しは松本蜜華ちゃんな」 「お前の推しの話も聞いとらんが」 全く、こいつは·····と深いため息を吐く。 昨日のことを引きずっていたり、家を出る前はあんな感じであったし、今は騒がしいし、色んな意味で心が休まることがなく、どっと疲れが押し寄せる。 学校をサボって、気分転換にどこかに行きたい気分だ。とはいえ、朱音の成績はギリギリであるため、そんな余裕はないのだが。 と、そこで一瞬の隙が生まれてしまったらしい、いとも簡単に携帯端末を取られてしまった。 「で、朱音は何を見ていたわけ?」 「ちょ、おい!」 「なになに·····『天才現る! 小学生で大人顔負けの演奏した新倉紫音君は、三歳の頃からヴァイオリンを習い始め、毎日欠かさず練習し続けた努力家でもあるが、ご両親とも名の知れた演奏家であり、その親譲りとも言える才能も相まってのこと。将来期待された小さなヴァイオリニスト』·········って、誰だ? ──あ、」 「誰でもいいだろ」 勝手に見んなよ、と携帯端末の電源ボタンを押し、ポケットに入れる。 朱音の様子を見ていた大野は何か閃いた顔をした後、ニマニマする。 「あれぇ〜? もしかすると、愛しい『しおんにぃ』ですかぁ〜?」 「だったら、なんだって言うんだよ」 「いやぁ〜? 別にぃ〜? にしても、そのしおんにぃ·····いや、紫音先輩? そんなにもすごい人だったなんて。弟の朱音君も鼻が高いんじゃないっすか〜?」 「いや、まあ··········」 このっこのっ、と肘で小突いてくる大野に曖昧な返事をしたことに違和感を覚えたらしい、「どったの?」と首を傾げてくる。 「それがさ·····。昨日、お前らとゲーセン行く約束をすっぽかして屋上にいるっていう噂を聞きつけて、行ってきたんだけどさ·····」 「で、いたの?」 「まあ、いた、んだけど·····」 「けど?」

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