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第1話
「あぁっ…!…あっ…♡あぅ…あぁ…♡」
テレビ局のある楽屋で、喘ぎ声が小さく響く。
廊下の壁に、【藤野カオル 様】と書かれた紙が貼られている。
本屋に行けば、必ずと言っていいほどに彼が表紙の雑誌が並んでいる。身長185cmという抜群のスタイルと、クールビューティーな彼のルックスは世の女性を虜にした。
「声出すな、我慢しろ。」
「あぁ…♡ごめんなさいぃ♡」
そんな彼が、楽屋でセックスしている。それも、彼が喘いでいる。
「あぁ…。もっと締めろよ。なんだよ…ガバガバじゃねぇか。」
強く尻を叩かれた。
「あぁっ!…ご、ごめんなさい…ご主人様♡」
「撮影前に中出しして欲しいっつったのはお前だろ」
「はい…♡あぅ…っ!な、中に…出してほしいです…♡ご主人様の…精子…僕に…♡くださいぃ♡」
「…ならもっと締めろ。」
「はぁいっ♡」
ご主人様、と呼ばれている顎髭の生えた男。茶髪の長い髪を束ねている。
「あぁっ♡イっくぅ…♡イくイく♡♡」
「誰がイっていいなんて言った?」
「ごめんなさい…!」
「お前のご主人様より先にイってんじゃねぇよ…」
「あぁっ...//…ご主人様…!イかせて…下さい…♡」
「……だめだ。」
「かはっ…!」
カオルの首には、黒の首輪。繋がれた鎖を引っ張られた。
「……ぁ…っ…!!」
「…撮影前に頼んできたお前が悪いんだからな、跡付いても知らねぇぞ」
「…っ…ぅ…♡♡」
首輪で首を絞められて苦しそうだが、気持ちよさそうに喘ぐ。白目を剥いて、口をがくがくとしている。彼の腰振りは、さらに強くなる。
「あ…!ぁ……!あぅ……♡♡」
「あぁ…出る…溢れないようにちゃんと締めておけ。」
「ぁ……♡♡」
カオルは嬉しそうに頷いて、イスの背もたれを強く掴んだ。
「……ぁっ!!」
「…ふぅ……」
カオルの中に出されたとろとろした精液。きゅうきゅうと締め付けるアナル。血管の浮き出たペニス。
「あぁ、時間だな。」
「あぅ…」
男は腕時計を見て、ペニスを抜いた。ジーンズのファスナーを上げて、机に置いていたカメラを手に取った。
「はぁ…はぁ…」
紅潮した顔で息を切らすカオルの姿を、鏡越しにカメラに写した。カシャと音がした。
「ケツ出せ。」
「んぅ……♡」
言われた通りに尻を突き出した。
「あー、出てきた。」
頑張って締めようとしても勝手に広がるアナルから精液が流れ出てくる。また、それを撮った。
彼はカメラの履歴を見て呟いた。
「お前のアナル写真集、出来そうだな。」
「ん…ご主人様が望むなら…」
「はっ、そしたら俺の収入が無くなる。」
「…ほら、顔上げろ。」
彼はカオルの首輪を外した。
「撮影、頑張れよ」
「…ご主人様…ありがとうございます…」
「じゃ。」
彼はカメラを持って楽屋を出ていった。雑に放置されたカオルは、ある写真集を手に取った。
【藤野カオル 写真集】
去年発売された、自らの写真集。
【カメラ 竹崎龍一】
「ご主人様…もっと…撮ってよ。」
表紙のカオルは美しかった。綺麗な黒髪から水が滴り、瞳は潤っているのが写されている。
「はぁ……」
ため息を1つついて、カオルは楽屋を片付けた。
「ふぁー…」
大きく口を開けて欠伸をする顎髭、竹崎龍一。染めた茶髪はもう既にプリンが目立つ。
「竹崎さん、お疲れ様です」
「おう」
新人アシスタントの挨拶にも適当に返す。彼は何もかもが適当。そんな彼を好む人は好むし、嫌う人は嫌う。だが、彼の写す写真は誰もが好んだ。
プロのテレビカメラマンとしても活躍しているし、個人で 写真家 としても活躍し始めた。
映画やドラマ、雑誌…。彼に頼み込む者も増えた。
一番話題になったのは、カオルの写真集。
その写真集は、当時まだ売れていなかったカオルが注目されるきっかけにもなり、竹崎の写真家としての名前も知られるようになった。
竹崎は誰もいない喫煙所に入り、煙草を咥えてカメラを開いた。
また、履歴を見返していく。
どの写真もカオルばかり。直近は全て、人様には見せられないようなカオルのハメ撮り。世に流出してしまったら2人は終わりだろう。だが、もっと遡ると可愛らしい笑顔を見せるカオルが写っていた。
「……もったいねぇよなぁ」
竹崎はスマホを取り出し、SNSアプリを開く。
そこには、綺麗な身体をした男が縄で縛られている写真が投稿されていた。スクロールしても、似たような写真ばかり。自慰行為で無様に射精している動画。
「……可愛い」
竹崎が見ていたのは、とあるアカウント。
顔出しはしておらず、先の尖った舌を出したアイコン。綺麗な鎖骨も写っている。
トップに固定されていた写真には、シャツを脱いでハーネスが付けられた美しい肉体が写されていた。鍛えられた腹筋は割れて、胸筋も目立つ。臍の下から股間に向かって生えるギャランドゥ。
ギリギリを攻めるような下着。腰にリボンが付いていた。
「えっちだなぁ、カオル君。」
【Mな裏垢男子。出会えません!】
と 記されている、このアカウント。
どうやらカオルのアカウントのようだ。
「お、追加された。」
その裏垢にまた新たに画像が上げられた。
「モザイクしても分かっちゃうって。悪い子だ。」
鏡に写った、尖った舌先を出しているカオル。鏡の向こうの背景はモザイクがかけられている。前を開けたシャツを脱いで、綺麗な身体を見せている。
「しゃーねぇな。俺しか見ないけど」
よく見ると非公開のアカウント。フォローもフォロワーも1人。投稿に いいね を押して、ふぅと煙を吐いた。
「…あ、行くか…。」
腕時計を見て、竹崎は立ち上がって喫煙所を出た。
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