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第39話 海斗
「暑い…ちょっと待っててね、蓉さん」
急いでシャワーを浴びて出てくると、蓉はベッドの上でまだグッタリとしていた。
「蓉さん?大丈夫?何か食べる?」
「お前…ほんっとに性欲のバケモノな」
「えーっ、だって蓉さんが煽るからじゃん。今回は俺、1ミリも悪くないよ?ほら、何か食べよう?今、作るから」
あれから何度もしつこく蓉を求めてしまったので、時刻は深夜になっていた。深夜に食べるのもなぁと思うが、蓉を空腹にさせてはいけない。何を作ろうかと冷蔵庫を開けて考える。
「海斗…俺、カップ麺食べたい。やきそばがいい。ジャンクなの食べたい。この前買ったやつあるじゃん。それがいい」
「そんなんでいいの?その他は?あ、おにぎり作る?」
「えーっ!いいの?おにぎり!やきそばとおにぎりなんて、すげぇ!ゴールデンコンビじゃん」
グッタリしていた蓉は食べ物の話になると元気が出たようでシャワー浴びてくるといい、海斗の部屋のシャワーを使っている。
お互いの部屋に少しずつ私服を置いていた。それを着させようと思い、蓉の服を探したが、運悪く洗濯カゴに入っている。仕方がないので海斗のTシャツを出しておいた。下着は一枚だけ洗濯済みが見つかった。
シャケフレークがあってよかった。お米も冷凍しておいてよかったと思いながら、海斗はおにぎりを握る。そういえば、実家でよく食べていた母さんのおにぎりの具も、鮭だったなぁと思い出していた。
「海斗…腰がバカになってる。痛い…」
シャワーから出てきた蓉が呟き、海斗のTシャツを着ている。サイズが大きいようで、お尻まで隠れている。
「大丈夫?蓉さんが今日は何故か張り切ってたから…でも明日どこかまで送って行こうか?」
「いいよ、寝れば治るだろうし…それより、おにぎり!嬉しい!海斗のおにぎり好きだよ。ご飯がふわっとしてて」
蓉が座るソファにクッションを置いた。カップ麺とやきそばにお湯を入れる。
「…何でさ、今日こっちの部屋でセックスしたの?いつもあっちでしてるのに。こっちだとさ、声が隣に聞こえちゃうかもしれないから嫌だって蓉さんが言ってたんだよ?絶対、聞こえちゃったと思う」
「もう、アレコレ考えんのやめようと思って。まぁ、声はヤバいよな、聞こえたら。それはちょっとマズかったかも。だけど、セックスはあっちの部屋、アレはこうとか、決まりきったことがあるとお前を苦しめるんじゃないかなって思ってさ。会社で息苦しくなるんだったら、プライベートはひどく自由にしようぜ」
固定観念とか、常識とか、行動を規定するようなことはプライベートではやめようと蓉は言う。
「蓉さん、カッコいい。本当に俺の好きな人はカッコいいな」
だから好きなんだ。海斗の気持ちは蓉にしかわからないと思う。それと同時に、蓉の気持ちも海斗しかわからないとも思っている。
「それに今日はこのままここで寝られるだろ?それもいいよな。セックスして食事して寝るなんて、最高だよ」
「蓉さんの欲求でしょ?ここで全部叶えられるもんね。セックスして、食べて、それから寝るでしょ」
「ふふふ、甘いな。俺の欲求は、今みっつだけじゃないんだなぁ」
3分経ったやきそばを湯切りし、蓉はいたずらな目をして笑っている。
「何?他にも出てきたの?欲求。えーっ…何だろう…」
「俺の身体にぶつかってくる、そんな海斗を受け止めたい。それが今の俺の欲求。今、一番好きなことだな。俺しか出来ないだろうなって思ってる」
ああ、本当。
こんなとこだよね、たまらなく好きなところと、心の中で海斗は呟く。
拗ねたり、落ち込んだり、イライラしたり、そんな海斗を全部蓉はわかっている。それを全身で受け止めたいと言ってくれている。
覚悟は間違ってなかったなと、海斗は改めて決意をしてる。
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