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第7話(おまけ)
黙っているつもりだった。伊佐名と身体を重ねたこと。
けれど、伊佐名に付けられた噛み痕が見えてしまったらしく、翌日には京丞にバレてしまった。机に肘をついて、その手に顎をのせた行儀の悪い不機嫌な京丞は、俺のことを睨んでいる。
「ねえ、孝。結婚式の友人代表スピーチは、俺にさせてくれるよね?」
「はあ? いや、男同士は結婚できないでしょ」
「誰も伊佐名ととは言ってないでしょ! いや、でも、籍入れなくても式はできるか……。身内でとか」
「身内だけでやったら京丞来られないけど」
「は? いやいや、俺は身内みたいなもんでしょ! 絶対行くかんね! そんで、絶対俺にスピーチさせて!」
「はあ……ったく、その頃には俺達疎遠になってるかもだぞ?」
「ないない。そんな訳ない。俺、ずっと一緒に居るもん。これからもずっと、傍にいる」
五十二ヘルツの鯨は
――今日も届かぬ愛を囁く
「実は僕、子供の頃から孝汰くんが大好きでした! 本当は僕が孝汰くんと結婚したかったです! なので、もし伊佐名と孝汰くんが別れたら、孝汰くんと結婚させてくださーい!」
「京丞おまえ何言って……! いや、えっ、なに!? お前、俺のこと好きだったの!?」
「……絶対離婚しない」
「じゃあ、一緒の老人ホームに入ろうね、孝汰♡」
「なんだこのポジティブモンスターは……? 誰だよコイツにスピーチ任せた奴……俺だよ!」
――尚、近年は研究が進み様々な説が飛び交っており、五十二ヘルツの鯨は案外孤独ではないのでは……? とも言われているそうだ。
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