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第2話
カーテンの隙間から差し込む淡い光で、意識がゆっくり浮かぶ。
見慣れない天井。
体にかけられた柔らかなタオルケット。
そして——
すぐ隣に聞こえる、規則正しい寝息。
横を見ると、五十嵐が寝顔を見せていた。
普段のキリッとした雰囲気からは想像できない、無防備で優しい顔。
昨夜を思い出し、胸がじんわり熱くなる。
……夢じゃなかったんだ。
そっと動こうとした瞬間、手首をやさしく掴まれる。
「……起きてたの?」
低くかすれた声が耳に落ちる。
半分眠ったままの目で、五十嵐が俺を見つめる。
「ん…おはよう、橘」
「……おはよう」
言葉を交わしただけで頬が熱くなる。
まだ体のどこかに昨夜のぬくもりが残っていた。
五十嵐は軽く伸び、俺の髪を撫でる。
「大丈夫だった? 無理とかしてないよな」
気遣う声に胸がじんとする。
「大丈夫。むしろ……安心した」
「そっか、よかった」
ふっと笑った表情は、いつもよりずっと柔らかかった。
少しの沈黙のあと、五十嵐が向き直る。
「橘さ。昨日のって……一度きりとかじゃないからな?」
「え……」
「俺、ちゃんとお前が好きだよ。冗談でもノリでもなく、本気で」
胸がくすぐったく跳ねる。
「だから、橘がよかったら……これからも、隣で起きたい」
まっすぐすぎる言葉に、心が温かく満たされる。
「……俺も。五十嵐と一緒がいい」
五十嵐の表情がやわらかくほころび、俺の頭をそっと抱き寄せた。
「そっか。……じゃあさ、今日はゆっくり朝飯でも食う?」
「……うん」
日曜の柔らかな光の中、互いの温度が離れられないまま、しばらく静かに寄り添っていた。
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