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紫音も同じような顔で見返した。 「私達も帰りましょうか」 「はい」 朱音の母親について行ったが、不意にまた大切に握りしめていたシーグラスを、半分ほど沈みかけていた夕日にかざした。 さっきよりかは暗くなってしまい、よりぼんやりとしてしまったが、それでも高揚感が湧き上がってきた。 磨けば、より景色が鮮明に見えるだろうか。どんな形を朱音とお揃いにしようか。 考えれば考えるほど、頬が緩んでしまうくらい楽しく感じられるが、同時に朱音との別れが近づいていき、悲しみが溢れ出てきてしまう。 きっと朱音と会えるのは、このひと時だけで、これから先は会うことはないのだろう。 今まで会ってきた、今はもう顔すら覚えてない人達のように。 だから、この手の中にある物でどうか、自分のことを思い出して欲しい。 顔も名前もおぼろげになってもいいから。 紫が入り交じる空が迫る中、紫音は悲しげにそう思うのであった。

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