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夕暮れの太陽に照らされた海面。最初は穏やかな波に揺られているそれの反射かと思っていたが、よく見ると、それに紛れて存在を放っているように煌めいて、紫音は拾い上げた。 丸くなった紫のビンの破片。 それを通して、オレンジ色に染まった空が紫色になって不思議な空を見ていた。 「あ···あった······」 湧き上がる興奮が抑えきれなくて、逆に囁くような驚きの声を上げたが、めざとく朱音の耳に入ったようで、「あったの!?」と駆け寄ってきた。 「うん、あったんだ。ほら」 朱音に見えるように手のひらの上に乗せて見せると、物欲しそうな目で見つめていた。 「あかとくんのもみつけようか」と言おうとした時。 「もうそろそろ帰らないと、夜になるよ」 やってきた母親がそう告げてきて、辺りを見回すと、元々数組程度しかいなかった海水浴に来た人達が、自分らともう一組しかいなかった。 「え〜〜!!まだあかとのみちゅけてない!」 「ぼくのもそうだけど、オレンジ色もなかなかないんだ」 「でもほしいっ!」 「うーん······」 むぅ! と頬をパンパンに膨らませて、地団駄踏んでいる朱音に、頭を抱えた。 こうなってしまうと、意地でも見つけようとするまで帰らない。 弱った。 「朱音。だったら、紙粘土で作ってみようか」 「かみ、ねんど?」 「そう。自分で好きな形に作れるし、そう! 色だって好きな色を作れるのよ。魔法みたいに」 「······」 地団駄を止め、今度は眉間にこれでもかと皺を寄せている。 紫音みたいにシーグラスを欲しいが、聞いたことない"かみねんど"で自分で作ってみたいと葛藤しているのだろう。 「わ、わぁ、いいな。シーグラスはいっかいしかしっぱいできないけど、かみねんどなら、なんかいもつくりなおせるんだよ」 じっと考え込んでいる朱音にあと一押しして、そちらに興味を向かせようとする。 少々わざとらしかったかと、内心冷や汗をかきながら。 「······わかった」 しばらくした後、呆気ない返事をした。 これでもなお渋られるかと思っていたから、拍子抜けをしてしまいそうになったが、何はともあれ良かった。 「かえろー! つくるー!」 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、父親がいる場所まで走る朱音に、「危ないわよ」と声を掛けながらも、こちらに苦笑した顔を向ける。

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