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37.
「朱音。ごっくんしてからお話しないと分からないでしょ」
「もぐもぐもぐもぐ」
「口で言ってても、食べなきゃ意味ないだろ」
と言いつつも、面白いなと、父親が写真を撮っていると、一応父親の言うことに従って食べた後、言った。
「あかとがひろったしーぐらすどこ?」
「あ······ごめんね。どこかにいっちゃったみたい」
さっきは泣き止まない朱音をどうにか慰めようとしていたため、それどころではなかった。
けれども、自分のために拾ってくれたシーグラスをどこかにやってしまった自分が許せなかった。
それに、朱音がまた機嫌が悪くなってしまうのかと思い、内心落ち着かなくなった。
「ふうん、そーなんだ」
紫音が思っていたのとは打って変わっての返事に、拍子抜けしてしまった。
「え、いいの? あかとくんがいっしょうけんめいみつけたものなのに」
「しおんにぃとみつけたい」
涙で濡らした目で見つめてくる。
そのような真っ直ぐな瞳で見つめてくるものだから、断ることなんて出来ない。ましてや、朱音のお願いであれば。
「紫音君、無理しなくていいんだからね」
「いえ、ぼくもあかとくんといっしょにみつけたいんです」
朱音の母親にそう返すと、慈しむように穏やかに笑った。
「そう。じゃあ見つけてらっしゃい」
「はい」
「しおんにぃ、いこ!」
返事をする傍ら、立ち上がっていた朱音に腕を引っ張られ、促されるように立ち上がると、そのまま連れて行かれる。
「もうちょっとゆっくりあるこうか」と言っても、無我夢中な朱音の耳には届くことはなく、浜辺へと赴いた。
「ここでみつけた!」と意気揚々と探し出す朱音とともに一緒に探し始めたものの、一向に見つからなかった。
出来れば、自身の名前にも使っている色を探したかったが、そもそも海水浴として使われている海には奇跡に近いほど無いに等しい。
「ないない〜!」
「ないね······」
気づけば夕暮れになっていた頃、最初の勢いがなくなってきた朱音に、「あきらめよう」と声を掛けようとした時だった。
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